理研ら,小脳活動の大規模可視化に成功

理化学研究所(理研)と日本医療研究開発機構は,小脳皮質の背側全域を同時に計測可能な実験システムの開発し,小脳全体で時々刻々と変化する感覚入力をリアルタイムで表現していることを見いだした(ニュースリリース)。

小脳はその小さな体積に大脳よりも多くの神経細胞を含んでおり,運動や知覚にとってなくてはならない。

小脳皮質の領野と身体の部位との対応については見解が分かれているが,これまで小脳皮質と身体の部位との対応は,主に細胞外電極によって比較的少数の神経細胞の活動を計測する手法で多くの動物を調べ,全体像を推定するという方法を用いて解析されてきた。

近年,蛍光カルシウムセンサータンパク質と二光子励起レーザー顕微鏡で,数mm四方の脳の領野に含まれる数百個程度の小脳皮質から出力する唯一の細胞である,プルキンエ細胞の活動が計測できるようになったが,マウスの小脳は8x5mm程度の大きさであり,プルキンエ細胞の活動の全容は不明のままだった。

そこで研究では,蛍光カルシウムセンサータンパク質yellow cameleonを全ての小脳プルキンエ細胞に発現する遺伝子組換えマウスと,独自に開発した超広視野マクロ顕微鏡システムおよび画像解析技術を組み合わせることで,小脳皮質の背側全域を同時に計測可能な実験システムを構築した。

超広視野マクロ顕微鏡システムは,カメラ用の高い開口数のレンズと一光子励起を組み合わせ,CCDやCMOSなどのイメージセンサーにより画像を取得する顕微鏡で,広い視野における高速イメージングに用いられる。研究では,yellow cameleon用に二波長の蛍光を計測可能な顕微鏡を開発した。

これを用いて,2万個以上のプルキンエ細胞の複雑スパイクの発火を同時に測定し,これまで計測が難しかった「単一試行における時々刻々と変化する複雑スパイク集団が持つ情報」を定量的に解析した。

その結果,小脳には従来考えられてきた,前肢や後肢に個別に対応した並列計算をする局所モジュールがあるのではなく,「セグメント」と呼ばれる小区域の活動パターンの組み合わせが,全体として身体のさまざまな部位への感覚入力の確率をリアルタイムで表現する,分散型の集団符号化を行なっていることが明らかになった。

研究グループは今後,小脳疾患により生じる運動障害や知覚障害の治療やリハビリテーション,考えただけで外部機器を操作するブレイン・マシン・インターフェイスや脳型コンピューターなどの開発へ向けた応用が期待できるとしている。

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