ソニーは,業界初の車載LiDAR向け積層型直接Time of Flight(dToF)方式のSPAD距離センサー「IMX459」を商品化する(ニュースリリース)。
SPAD画素は,LiDARの測距方式のうち,光源から対象物に反射して戻ってくるまでの光の飛行時間(時間差)を検出することで距離を測定するdToF方式の受光素子の一つとして用いられている。
この製品は,裏面照射型のSPAD画素を用いた画素チップ(上部)と,測距処理回路などを搭載したロジックチップ(下部)を,Cu-Cu接続を用いて積層し,一画素ごとに導通している。
画素部の下に回路部を配置することで,10μm角の微細な画素サイズながら開口率を維持できることに加え,光の入射面に凹凸を設けることで入射光を回折させて吸収率を高めた。これにより,車載LiDARのレーザー光源として広く普及している905nmの波長に対して,24%の高い光子検出効率を実現したとする。
例えば遠方にある反射率の低い対象物でも,高い解像度と距離分解能で検知することができる。また,画素ごとにCu-Cu接続した回路部に,アクティブ・リチャージ回路を搭載し,一光子あたりの応答速度を通常時約6ナノ秒に高めている。
この独自の積層構造により,遠距離から近距離までを,15cm間隔で高精度かつ高速に測距することが可能になり,車載LiDARの検知・認識性能の向上に貢献するとしている。
同社ではこの製品について,自動車向け電子部品の信頼性試験基準「AEC-Q100」の「Grade2」を取得予定。さらに,自動車向け機能安全規格「ISO 26262」に準拠した開発プロセスを導入し,故障検知,通知,制御などの機能安全要求レベル「ASIL-B(D)」に対応している。
同社はさらに,この製品を搭載したメカニカルスキャン方式のLiDARをリファレンスデザインとして開発し,顧客やパートナーに向けて提供を開始する。これにより,顧客・パートナーのLiDAR開発における工数削減や選定デバイスの最適化によるコスト削減に貢献したいとしている。