弘前大ら,レーザーでリンゴ内の健康成分を測定

弘前大学と理化学研究所は,リンゴに特徴的に含まれる健康機能性成分である「プロシアニジン」を非破壊かつ簡便,スピーディーに測定する技術を開発した(ニュースリリース)。

リンゴはポリフェノールなどの健康の向上に役立つ機能性成分を多く含む。ポリフェノールの中でもリンゴに含まれるプロシアニジンは抗酸化作用の他,抗アレルギー作用やメラニン生成抑制(美白)作用,育毛,アンチエイジング,内臓脂肪の蓄積を抑制するなどの様々な機能性が報告されている。

これまでプロシアニンジン含量の測定では,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が一般的に用いられてきた。HPLCは,細切したリンゴの凍結乾燥や粉末化,プロシアニジンの抽出など,分析試料作製のためにいくつかの前処理行程を必要とし,その後,1サンプルあたり数時間という比較的長い時間をかけてプロシアニンジン含量を計測する。

また,分析に使用したリンゴは廃棄されてしまうことから,非破壊かつ簡便,スピーディーにリンゴ内のプロシアニンジン量を計測できる技術が求められてきていた。

そこで研究グループは,レーザー計測およびデータサイエンスを駆使したラマン分光法を用いることで,リンゴ内に含まれるプロシアニンジン量を非破壊計測する技術を開発した。

具体的には,農園で収穫した多数のリンゴサンプルを,ラマン分光計測およびHPLCにかけ,そこから得られた大量の計測データを統計分析することで,プロシアニジン量を予想することができるモデルを作製した。

その結果,レーザーポインター程度の微弱なレーザー光を15秒間リンゴにあてるだけで,リンゴ内に含まれるプロシアニジン量を簡便かつスピーディーに非破壊で推定することに成功したという。

研究所グループは,今後の展望として,この技術を用いることで,品質の高いリンゴの生産や出荷に役立てることが期待でき,また,リンゴ以外の食品・果物に含まれる機能性成分測定や食品・果物から得られる不透明であった様々な情報も同様の技術で計測することが可能になるとしている。

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