リコーと九大,IoT向け有機薄膜太陽電池を開発

リコーは九州大学と2013年から共同研究・開発した発電材料を採用した屋内や日陰で効率的に発電できるフレキシブル環境発電デバイスを,各種センサーを常時稼働させるための自立型電源用途として,サンプル提供を9月から開始する(ニュースリリース)。

今回のフレキシブル環境発電デバイスは,九州大学の高性能有機半導体設計/合成技術と,リコーの有機感光体の材料技術を組み合わせた。

屋内のような低照度(約200 lx)から,屋外の日陰などの中照度(約10,000 lx)環境下で高効率な発電を実現。薄型・軽量で曲げることが可能なフィルム形状であるため,さまざまな形状のIoTデバイスに搭載が可能だとする。

リコーは,九州大学との共同研究によって,光電変換層(P型有機半導体)の分子構造や材料組成などを精密に制御することで,低照度から中照度でも高い電圧と高い電流が得られる有機光電変換系を開発した。

さらに,有機デバイス設計において,中間層(バッファ層)材料の最適化や界面制御に基づき,さらなる高効率化と高耐久化を実現したという。

低照度から中照度まで高い光電変換効率を維持するとともに,高照度環境下(疑似太陽光:約100,000 lx)における長時間暴露試験においても高出力を維持する。部分陰による影響が少ない遮光特性により,セルに陰がかかっても急激な出力低下がないという。

この製品は,移動型・携帯型のウェアラブル端末やビーコンなどのデバイス,およびトンネル内や橋梁の裏側に設置される社会インフラのモニタリング用デバイスなどの自立型電源として適用が可能。これにより,身の回りの多彩な小型電子機器類の電池交換が不要となり,利便性の向上とともに持続可能な開発目標(SDGs)への貢献も期待される。

リコーは,2020年から提供している屋内向けの固体型色素増感太陽電池(DSSC)に次ぐ環境発電デバイスとして,IoTデバイスメーカーやサービス事業者,商社向けにサンプル提供を行ない,早期の商品ラインアップ化を目指すとしている。

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