理研,水のナノメートル空間の相互作用を発見

理化学研究所(理研)は,水の「ナノメートル空間」で観測される非弾性X線散乱スペクトルの中に「ファノ効果」と呼ばれる干渉効果に似た相互作用が現れることを発見した(ニュースリリース)。

X線や中性子線を光源とし,観測する空間スケールを細かくしていくと,水の運動には何らかの新しいモード(運動のパターン)が現れることが多くの研究で示唆されてきたが,実験結果の解析や解釈について統一的な見解が得られていなかった。

研究グループは,大型放射光施設「SPring-8」に設置されている高分解能非弾性X線散乱スペクトロメータを用いて,1meV以下というこれまでにない非常に高い精度でナノメートル空間における水の集団運動を観測した。

その結果,二つのことが明らかになった。一つは,これまで考えられていたよりも広い空間まで,水分子サイズの効果に起因する「粘弾性効果」が働いていたこと。これは、従来の認識よりも大きな水分子集団が弾性体としての性質を持つことを示しているという。

もう一つは,これまで必要だと考えられてきた新しいモードは実は不要だったということ。新しいモードと考えられてきたものは「ファノ効果」と呼ばれる水のダイナミクスの干渉効果に関係していたことが,非弾性散乱スペクトルの解析から分かった。

これは,ナノメートル空間で観測される水の運動を正確に理解するには,水の拡散(ランダムな運動)モードと音響モードだけでなく,それらのモード間に働く相互作用を考慮する必要があることを示しているという。ファノ効果は分光学ではよく知られた現象だが,これまで実験データの解析に取り入れられたことはなかった。

今回,SPring-8で高精度のデータを取得できたおかげで,長年にわたる論争の問題点が明らかになった。水のナノメートル空間の運動を理解するには,水の拡散モードと音響モード間の相互作用を考慮すればよいということが明らかになり,液体のモデルを必要以上に難しくせずに考えられるようになった。

今後,他の多くの液体でもナノメートル空間の興味深い運動が観測されると考えられる。研究グループは,今回明らかにした相互作用を考慮することで,液体の運動のより正確なモデルを作成でき,メソスケールの液体の運動の理解が一層進むと期待している。

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