分子科学研究所,大阪大学,ユニタック,LAcubedは,「超小型レーザーを使用した最先端のレーザーピーニング」を開発した(ニュースリリース)。
レーザーピーニングは,高出力のパルスレーザーを照射して材料の表面に圧縮の残留応力を形成することにより,材料の機械的な強度を飛躍的に高める表面処理技術。疲労寿命の延長に高い効果があるため,厳しい環境で使用されるジェットエンジンの長寿命化等に利用されてきた。
しかしながら,高出力のパルスレーザーは装置が大型で,その運用にはクリーンルームが必要となるため,現場作業が必要な航空機の保守や橋梁等のインフラへの適用は困難であり,屋内での利用に限られていた。
分子科学研究所は取扱が容易な手のひらサイズの超小型レーザーを開発してきたが,レーザーピーニング用のエネルギー源としてはパルスエネルギーが従来と比較して3桁小さいため,力不足で利用できないと考えられていた。
これに対し研究グループは,超小型レーザーのパルス時間幅が従来と比較して1桁短いという特徴を活用し,従来より3桁小さいパルスエネルギーを使用した場合においても材料に対するレーザーの照射方法を工夫することにより,従来と同等のレーザーピーニング効果が得られることを発見した。
そこで,手のひらサイズの超小型レーザーと小型レーザー電源および小型の人協働ロボットを組合せることにより,従来と比較して桁違いに小型・軽量で,持運びが容易なレーザーピーニング装置を開発した。
小型で取扱性に優れるレーザーピーニング装置は,工場の生産ラインにおける活用が期待される。さらに,持運びが容易で屋外でも使用できることから,これまで適用が難しかった橋梁などの屋外のインフラ保守への応用が期待されるとする。また,ドローンやレーザーによる点検技術などと組合せることにより,僻地にあるインフラの保守・延命などへの応用も期待される。
研究グループは,この成果を「Society 5.0科学博」に出展する。「Society 5.0科学博」は,内閣府と海洋研究開発機構との共同主催により,2021年7月15日(木)から東京スカイツリータウンにおいて開催される。