神大ら,ハリガネムシの水平偏光への誘引を発見

神戸大学,弘前大学,奈良女子大学,台湾National Changhua University of Educationは,ハリガネムシ類に感染したカマキリが,水面からの反射光に多く含まれる水平偏光に誘引され,入水行動に至っていることを発見した(ニュースリリース)。

寄生生物の中には,自らの利益(感染率向上)のために,宿主である野生動物の形態や行動を改変(宿主操作)する種が多くいる。寄生生物のハリガネムシは,繁殖場所である川や池に移動するために,寄生相手であるカマキリやカマドウマ等(宿主)を自ら川や池に入水させることが知られている。

先行研究では,宿主は水面からの反射光の明るさ(光強度)に引き寄せられて入水するとされていた。しかし,川や池以外にも,光を反射する環境は多くある。そのため,単純な明るさへの誘引だけでは,入水行動がなぜ生じるのかをうまく説明できなかった。

水面の反射光は,水平偏光を多く含む。近年,多くの節足動物が,水平偏光を手掛かりに水辺を探索・忌避していることが明らかになってきている。研究では,ハリガネムシに操作されている宿主は,水平偏光に誘引されて入水するという仮説を立てた。

研究ではまず室内実験によって,ハリガネムシに寄生されたハラビロカマキリ(感染カマキリ)と非感染カマキリがそれぞれ,水平偏光に誘引されるかを調べた。筒の一方から偏光を,他方から非偏光を照射する装置を作成し,4つの光強度下で,筒の中央から入ったカマキリが10分後に定位している場所を記録した。

その結果,感染カマキリは,非感染カマキリに比べて,水平偏光側を選択する確率が高まっていた。特に光強度が2000 lx以上で高い傾向がみられたという。一方,偏光を垂直に変えた場合には,光強度や感染の有無に関わらず,偏光側を選択する傾向は認められなかった。

次に,野外環境下で,明るくない(光強度が弱い)が,水平偏光を強く反射する池Aと,明るいが水平偏光をほとんど反射しない池Bを造成した。実験の結果,入水した16個体の感染カマキリのうち,14個体が池Aに入水した。これらの結果から,感染カマキリは水平偏光に誘引されて入水していると結論した。

また,多くの感染カマキリが,よく歩く時間帯である正午付近に入水することもわかった。これらから,カマキリやハリガネムシの概日リズムの下で,水平偏光への誘引や活動量の上昇が引き起こされ,特定の時間に入水行動が集中することが示唆された。

研究グループは今後,非感染カマキリは水平偏光を視るどんな仕組みをもっているのか,ハリガネムシはそれをどう操作しているのかを明らかにするとしている。

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