東芝グループは,同社グループが開発した光触媒が,新型コロナウイルスに対して一定の感染力抑制の効果を持つことを確認した(ニュースリリース)。
東芝マテリアルが開発した「ルネキャット」は,室内の光で抗菌・抗ウイルス・消臭効果を発揮する可視光応答型光触媒。床や壁などに噴霧することで抗菌・抗ウイルス・消臭効果を発揮し,これまでも,鳥インフルエンザウイルスやO157,黄色ブドウ球菌などを抑制することが外部機関の試験によって確認されていた。
この光触媒の新型コロナウイルスに対する抗ウイルス性試験について,日本医療研究開発機構(AMED)の研究事業に協力しており,今回,この製品を塗布したウイルスの感染力を測定する試験において,「ウイルス感染価が99.2%以上低下する」との結果が確認されたという。
試験は,30×30mmのガラス板にこの製品を4g/m2塗布した試験サンプルを使用し,フィルム密着法にて抗ウイルス試験を実施した。具体的には,照度3000 lxで6時間蛍光灯(UVはフィルターでカット)を照射した試験サンプルを比較サンプルとTCID50法により評価した。また,ウイルスの制御に関わる作用機序の解明に向けて,電子顕微鏡写真観察や免疫ブロット分析を行なった。
その結果,光照射前のウイルス感染価(対数値)は5.93であり,光照射後であっても,比較サンプル(バインダーのみ)のウイルス感染価(対数値)は5.18と大きな変化を示さなかった。一方で,この製品を塗布したサンプルのウイルス感染価(対数値)は光照射後には3.05となり,99.2%以上低下していることが確認された。
電子顕微鏡写真観察や免疫ブロット分析から,ルネキャットはウイルスのスパイクたんぱく質を減少させていることが判明し,その結果ウイルスの感染力を抑制する効果があることが示唆された。
現在,新型コロナウイルスの感染対策として一般的なアルコールや次亜塩素酸ナトリウム水溶液による消毒は即効性があるが,蒸発すると効果が得られない。一方,光触媒は,即効性はアルコールなどには及ばないものの,固体のため蒸発せず,効果が持続するという特長がある。
また,今回の試験結果は白色蛍光灯での結果だが,この製品は可視光応答型光触媒なので,白色LEDの光環境下でも光触媒効果を発揮するとしている。