⾹川⼤学の研究グループは,次世代の空間多重光ファイバに対応可能な光ネットワーク「空間チャネルネットワーク」の主要構成デバイスである「コア選択スイッチ」の低損失化と超広波⻑帯域化に初めて成功した(ニュースリリース)。
将来の空間多重技術に基づく光ネットワークにおいて導⼊が進むと予想される,光ファイバ内に複数のコアを配置するマルチコアファイバ(MCF)に対応可能で,⼤容量かつ経済的な光ネットワークの新たなアーキテクチャとして,研究グループはこれまでに空間チャネルネットワークアーキテクチャを提案している。
今回開発した,ここで使われるコア選択スイッチは,MCFアレーと微⼩レンズアレーからなるMCFコリメータアレー,MEMSミラーアレーから構成された独⾃の空間光学系を採⽤している。MCFアレーは,中央に配置された⼊⼒MCFと,その周囲に配置された出⼒MCFから構成されている。
⼊⼒MCF中の5つのコアを伝搬してきた各光信号は,直後に配置された微⼩レンズにより,出射⾓度の異なる5つの光ビームに分かれて空間を進み,集光レンズによって,直径1mmの5つのMEMSミラー⾯上にそれぞれ結像する。各MEMSミラーの⾓度を個別に調整することで,各光ビームが出⼒すべき出⼒MCFに結合し,出⼒される。MCFコリメータアレーとMEMSミラーアレーを採⽤したことで,全⻑約50mmの⾮常にコンパクトな光スイッチを実現した。
コア選択スイッチプロトタイプは,広い波⻑帯域(1500nm~1630nm)にわたって,⼩さな挿⼊損失(2.5dB以下)と偏波依存損失(0.25dB)を持つ。現在,光ネットワークで使われている光信号帯域のCバンドに加え,SバンドとLバンドの利⽤が進められようとしているが,今回開発したコア選択スイッチは,こうした光伝送にも⼗分に使⽤可能な超広波⻑域特性を有していることを確認した。
さらに,Cバンドの全波⻑域を専有する5つの光信号を空間多重し,これを波⻑選択スイッチプロトタイプでスイッチングし,そのビット誤り率を測定した。その結果,空間多重光信号を信号品質の劣化なしにスイッチング可能なことを実験的に確認したという。
コア選択スイッチは,従来の波⻑選択スイッチに⽐べてシンプルで,1台あたりの製造コストは従来の波⻑選択スイッチと同等以下となることが期待されるという。その⼀⽅で,スイッチング容量はMCF内のコア数だけ増加させることができる。
この成果は,将来の6G光通信システムを経済的に実現するための基盤技術として,我が国の産業競争⼒の強化に貢献するものだとしている。