東北大,磁性ワイル半金属の表面に金属伝導を検出

東北大学の研究グループは,磁性ワイル半金属Co3Sn2S2薄膜の膜厚を精密に制御することで,磁性ワイル半金属状態における表面伝導の発現を初めて捉えるとともに,その金属的性質を明らかにした(ニュースリリース)。

トポロジカル物質群と呼ばれる特殊な物質の一種である磁性ワイル半金属については,強磁性であると同時に,トポロジカルな電子構造に由来する様々な物性の発現が提唱されている。

磁性ワイル半金属の試料表面には,特異な電子構造に起因する表面状態が生じている。そのため,表面状態の特性は試料厚みに依存せず,優れた電気伝導を示すことが期待されている。しかしながら,表面状態と試料内部の伝導成分をそれぞれ分けて評価することは困難だった。

研究グループは,代表的な磁性ワイル半金属であるCo3Sn2S2の薄膜化に世界に先駆けて取り組み,膜厚の系統的制御による物性評価を進めてきた。今回,シンプルかつ制御性の高い「膜厚」をパラメータに用いることで,膜厚に比例する内部の伝導成分と膜厚に依存しない表面の伝導成分を分離できることに着眼し,未達成であった表面伝導の検出に挑んだ。

これまでの研究で,膜厚20nm以上の試料で磁性ワイル半金属の特徴を持つことが分かっていた。今回はそれらの試料を対象に,シート伝導度(単位面積当たりの伝導度)を詳細に評価した。約180Kの磁気転移温度以上の常磁性状態では,シート伝導度は膜厚と比例関係にあり(オームの法則),薄膜試料内部の伝導成分のみを考慮することで説明できる。

一方,磁気転移温度以下で強磁性の磁性ワイル半金属状態になると,シート伝導度が急激に増加するとともに,膜厚ゼロnmに対応するシート伝導度に有限の切片成分が明瞭に現れた。この結果は,膜厚に比例する試料内部の伝導成分に加えて,強磁性状態になると膜厚に依存しない伝導成分が出現することを意味するという。

さらに,この膜厚に依存しない伝導成分が温度低下に伴い増加,すなわち,金属的な温度依存性を示すことを明らかにし,磁性ワイル半金属の表面伝導であると結論付けた。

これらの結果は,Co3Sn2S2の表面伝導を初めて検出した成果であり,磁性ワイル半金属の物性解明に大きなインパクトをもたらすものだという。今回用いた膜厚制御の手法はCo3Sn2S2に限定されるものではなく,様々な物質系への適用が可能であることから,表面伝導の基盤的評価手法としての発展が期待できる。

また,優れた金属的表面伝導の存在を実証したことで,磁性ワイル半金属を用いることで初めて実現される素子機能の実験的検証も加速すると研究グループは予測している。

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