東京大学大の研究グループは,室内にある鉢植えのバラに,根元から上向きの光をあてることによって,バラを美しく保つことができることを明らかにした(ニュースリリース)。
一般に,植物に光をあてるときには,上の方に設置した下向きの照明を使うことが多いが,そのためには背の高いスタンドライトや照明器具を取り付ける支柱などを新たに用意しなければならない。また,上から光をあてていると,下の方の葉が枯れてしまうという問題もあった。
そこで研究グループは,植物体の根元に置いたLED照明からの上方照射の効果を調べるため,室内環境を模した薄暗い場所にバラの鉢植えを用意し,①LED補光なし,②上から下向きの照明をあてる(下方照射),③下から上向きの照明をあてる(上方照射)という3つの処理を行なった。
そして,植物体の上位葉・中位葉・下位葉それぞれについて,クロロフィル量,ルビスコ量,光合成活性を測定した。また,花芽の数をカウントし,枯死・未開花・開花の割合を調べた。
LED補光なしの場合,植物体下部の葉が枯れ,つぼみの大半が茶色に変色した。これは,室内のような薄暗い環境では,バラの生育は困難だということを示している。下方照射と上方照射で比較すると,葉の光合成特性を示すクロロフィル量とルビスコ量は,上位葉と中位葉では処理間に差がなかったものの,下位葉では上方照射の方が有意に多くなったという。
このことから,上方照射が植物体下部の葉の老化を抑制することがわかった。また,花芽については,下方照射の方がより多く開花したものの,上方照射でも3分の2以上が開花しており,上方照射も下方照射とほぼ同等の開花促進作用があることがわかった。
この結果から,上向きの照明は,葉も花も美しく保つことができ,照明を設置するためのスペースも必要ないため,室内で手軽にバラを楽しみたい人におすすめのツールとなる結果を得た。研究グループでは,LEDによる上方照射で鉢植えの植物を適切に管理することによって,人々の心を明るくすることができるとしている。