静岡大,酸化還元活性を示す有機色素化合物を開発

静岡大学の研究グループは,酸化還元活性を示す新規有機色素化合物の開発に成功した(ニュースリリース)。

機能性有機材料として有望な分子群の一つとして,多環へテロ芳香族化合物(PHA)が挙げられ,これらはヘテロ原子の特性に基づいた独自の機能を示す。

ヘテロ原子のうち窒素原子は,酸化度の高い「イミン型構造」と酸化度の低い「アミン型構造」に分類され,同じ原子であるにもかかわらず,互いに対照的な機能を発現する。そのため,酸化還元反応により両構造の相互変換が可能(酸化還元活性)なPHAは,対照的な二つの性質のスイッチングに基づいた機能を有する全く新しい有機材料となることが期待されるという。

研究では,ビタミンB2の生体内での酸化還元反応を担う鍵構造である 「1,4-ジアザブタジエン構造」を組み込むことで,新しい酸化還元活性PHA(5,11-ジアザジベンゾ[hi,qr]テトラセン)を設計し,その合成と物性評価を行なった。

その結果,この化合物は高い電子受容性および橙色発光を示す赤色色素化合物であり,還元型構造との相互変換が定量的かつ可逆に進行することを見出した。さらに酸化的水素化物置換反応を用いた化学修飾が可能であり,その分光特性を容易に制御できることを明らかにした。
  
この研究で得られた研究成果は,窒素原子中心の酸化還元に基づいた将来の有機機能性材料開発につながると考えられるといい,有機n型半導体,環境応答性発光材料および酸化触媒などへの応用展開が期待されるとしている。

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