東大,光触媒で空気中コロナの不活化を実証

東京大学は,光触媒技術で,空気中に浮遊する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染性を検出限界以下まで消失させることを実証した(ニュースリリース)。

現在,新型コロナウイルスの世界的蔓延は生命と社会・経済に大きな打撃を与え続けている。社会的脅威であるSARS-CoV-2を克服することは現代社会における重要な課題であり,SARS-CoV-2と共生するWithコロナの社会を実現していく上で,SARS-CoV-2の不活化に有効な技術を正確に検証していくことが強く求められている。

光触媒は抗菌・抗ウイルス効果を有することが知られており,さらに最近,紫外線を用いた酸化チタン光触媒の液体中のSARS-CoV-2の不活化能が示されたが,その詳細なメカニズムは解明されていない。

また,可視光線を利用した酸化チタン光触媒が液体中のSARS-CoV-2を不活化できるか否か,さらに,環境中でのSARS-CoV-2の感染経路として重要なエアロゾル中での効果も未だ明らかになっていなかった。

研究グループは今回,光触媒の実生活への応用を検証するために,120Lのアクリルボックス中にエアロゾル化したSARS-CoV-2を噴霧し,光触媒搭載の空気清浄機を稼働させた。

光触媒に405nmの可視光を20分間照射することによって,エアロゾル中のSARS-CoV-2を99.9%不活化できることを世界で初めて実証した。同時に,光触媒に励起光を120分照射することによって,光触媒をコーティングしたガラスシートに滴下した液体中のSARS-CoV-2も99.9%不活化した。

光触媒によるSARS-CoV-2の不活化機序として,光触媒反応によるSARS-CoV-2のウイルス粒子への損傷,RNAへの損傷,ウイルスタンパク質の分解が確認されたという。これらの反応を通じて,SARS-CoV-2が光触媒反応によって不活化されることを始めて明らかにした。

これらの結果より光触媒技術が液体中とエアロゾル中の新型コロナウイルスの感染性を検出限界以下まで消失させることが実証されたとする。光触媒反応は紫外線のように人体への有害な作用がなく,屋内の人がいる生活空間において応用が可能であることから,この研究成果はSARS-CoV-2の感染リスクの減少に寄与すると考えられるとしている。

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