埼玉大学と独マックスプランク地球外物理学研究所らは,ドイツのeROSITA衛星を使った全天掃天観測などから,これまで静穏であった2つの銀河が準周期的爆発を起こしていることを発見した(ニュースリリース)。
eROSITA望遠鏡は,X線で全天を掃天観測しており,継続的に取得されたデータは,今回の爆発のような突発的な天体現象を探すのに適している。eROSITAによって発見された2つの天体は,欧州宇宙機関のX線観測衛星XMM-Newtonおよび,国際宇宙ステーションに搭載されたX線望遠鏡NICERによる追観測結果とあわせると,いずれもわずか数時間の間に振幅の大きいX線変動を示した。
一方,埼玉大学が参画する光・赤外線天文学大学間連携による観測などからは,通常の活動銀河核と異なり,これらの天体に降着現象を示すスペクトルや光度変化が見られなかった。つまり,先行研究で見つけられていた類似天体と異なり,eROSITAで見つかった今回の天体の母銀河は,ブラックホールの活動性をこれまで示していなかった。
今回発見されたような準周期的な放射は,典型的には,連星系に由来して見られるという。もしブラックホールの周りを公転する天体の存在がこのようなX線強度の爆発的上昇の引き金になっているとすれば,その質量はブラックホールの質量よりもはるかに小さく,恒星や白色矮星程度でなければならない。そして,その公転する天体はブラックホールに近づく時に受ける大きな潮汐力で一部が破壊されているかもしれない。
このX線の爆発的な上昇の原因はまだわかっていないが,最近までこのブラックホールの近傍は静穏であったので,これらの現象を引き起こすために,活動銀河に存在するような降着円盤がかつては存在していなくても説明できるでるという。
これらの銀河は比較的小さく,地球からあまり遠くないため,今回の発見は低質量銀河の中でブラックホールがどのように活発になるかを解明する手がかりになると期待されるとしている。