東北大ら,三体力にアプローチする手法を開発

東北大学,大阪大学,高エネルギ-加速器研究機構,理化学研究所,九州大学,宮崎大学は,陽子とヘリウム3原子核の高精度散乱実験を行ない,実験的な証拠を掴むのが難しいとされてきた三つの陽子の間に働く三体力にアプローチする手法の開発に成功した(ニュースリリース)。

原子核は陽子と中性子で構成される。湯川秀樹が提唱した原子核を構成する力(核力)は,陽子と中性子の二体間に働く二体力として理解されて
きたが,近年,この二体力だけでは原子核そのもの,また原子核が深く関与する宇宙・天文の諸現象を説明することができず,三つの陽子・中性子間に働く「三体力」が極めて重要な役割を果たすことが明らかになってきた。

特に三つの陽子間,または三つの中性子間で働く三体力(T=3/2 型三体力)は,2010年以降に発見されている重たい中性子星の説明や,超新星などの天体現象で短時間の間に大量に多種生成されるエキゾティック原子核の理解に欠かせない核力として注目されており,現在,実験による直接的な証拠が待たれている。

研究では,T=3/2型三体力にアプローチする手法として陽子とヘリウム3原子核(陽子数2,中性子数1)による散乱(p-3He散乱)に注目した。この散乱では三つの陽子が瞬間的に相互作用することが期待される。

高精度に測定した実験結果と二体力のみを考慮した厳密理論計算との比較を行なったところ,断面積σが最小値となる散乱角度付近では理論計算が実験値を説明できないことがわかった。

同じ現象は,三体力のもう一つの成分であるT=1/2型三体力が主要成分として働く重陽子(陽子数1,中性子数1の原子核)と陽子の散乱(d-p散乱)でも確認されている。d-p散乱では,Δ励起を伴う三体力によって実験値との不一致が改善されることが知られている。ところが,今回測定したp-3He散乱ではΔ励起の効果は殆ど効かないことが判明した。

以上の結果と考察から,p-3He散乱はd-p散乱ではアプローチできない三体力,つまりT=3/2型三体力にアプローチする有効な散乱であるという結論を得た。

研究グループはこの成果について,原子核から中性子星まで,これらを統一的に理解する極めて予言能力の高い核力の完成に向けた重要なステップとなるとしている。

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