理研,陽子内のグルーオンのスピンの向きを決定

理化学研究所(理研)は,陽子内部のクォークおよびグルーオンの散乱で直接生成する光(直接光子)により,グルーオンのスピンの向きを正確に測定し,グルーオン・スピンと陽子スピンの向きが同じであることを明らかにした(ニュースリリース)。

陽子や電子,素粒子は,スピンと呼ばれる固有の性質を持っており,スピンには上向きあるいは下向きのどちらかの向きがある。陽子はクォークとグルーオンという素粒子から構成されており,陽子スピンを説明するには,グルーオンの向きを調べる必要がある。

研究グループは,米ブルックヘブン国立研究所(BNL)の衝突型加速器RHICを用いて偏極陽子同士を衝突させ,グルーオンの散乱からの直接光子の生成数の非対称度を測定した。

高エネルギーの陽子同士を衝突させると,中性パイ中間子などの粒子が多く発生し,中性パイ中間子は発生後すぐに2個の光子に崩壊する。この崩壊光子の量は直接光子の量の何倍もあり,直接光子の測定を妨げる雑音になることから,直接光子の信号を崩壊光子の雑音と分離する必要がある。

まず,光子の中で中性パイ中間子の崩壊が起源と分かるものを取り除く。次に,直接光子の周囲には他の粒子があまり発生せず孤立していることを利用し,周辺に他の粒子が存在する光子を取り除く。こうして,測定した光子の中で直接光子の占める割合を高め,さらに残された崩壊光子の影響を補正した。

この実験では,膨大な雑音の中からグルーオンの散乱から生成する直接光子を正確に識別する電磁カロリメータに,最も細分化されたPHENIX実験用電磁カロリメータを使用した。

衝突点の両側にあるPHENIX実験用電磁カロリメータは6×12のモジュールで構成され,一つのモジュールはさらに12×12に細分化されている。この電磁カロリメータの細分化が足りないと,二つの光子が近すぎる場合二つの光子が一つのクラスターに統合されてしまい,二つの光子を分離できない。

1万個以上に細分化された検出器の一つの”眼”が見込む角度は約0.6度と非常に狭く,崩壊光子の雑音を十分に除去できる。測定の結果,生成された直接光子の大部分は正の非対称度(グルーオン・スピンの向きと陽子スピンの向きが同じ)を持つことを決定的に支持する結果となった。

陽子内部のグルーオン・スピンの向きは,BNLに建設される電子・イオン衝突型加速器により,さらに精密測定できるようになり,陽子のスピンの起源に対して決定的な結果を得ると予想されている。

陽子スピンは量子科学の基礎研究から応用まで広く用いられるプローブであり,研究グループは,今回の研究成果は量子科学の発展に大きく寄与するものだとしている。

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