名大,画像強調内視鏡で腺腫の見逃し率減少を実証

名古屋大学の研究グループは,通常の内視鏡観察で使用されるWLI(White Light Imaging)と比較して画像強調内視鏡の一種であるLCI(Linked Color Imaging)を使用することで,内視鏡観察時に生じるポリープ(腺腫)の見逃しが減少することを明らかにした(ニュースリリース)。

大腸癌は主に良性腫瘍である腺腫が経年変化することで発症するものと考えられており,内視鏡観察時に発見した際には早期の切除が望まれるが,内視鏡の熟練医でも10~30%程の病変は見逃しているという報告もある。一般的に腺腫は周囲の正常な粘膜と比べて赤色であることが多いが,赤色の弱い病変や小さな病変,平坦な病変は見逃されやすいとされている。

高解像度画像処理技術である画像強調内視鏡は,しばしば病変に対して行なわれる色素散布や追加の内視鏡補助装置を必要とせず,画像処理によって内視鏡のボタン1つで適応できる。画像強調内視鏡は病変の表面構造や血管構造をより強調させる技術だが,その一種であるLCIは赤色をより強調することができる。

以前から使用されていた画像強調内視鏡は,通常のWLIの観察と比較しても視野の明るさが不十分であったため,腺腫検出率を改善させるか否かは意見の分かれるところだった。一方LCIはWLIよりも明るく,かつ慣れ親しんだ通常のWLIに似た色調での観察が可能であり,腺腫検出率の改善や腺腫見逃し率の低下が期待されるという。

研究グループはWLIとLCIについて,病変の見逃しや主観的な見易さについて評価した。その結果,腺腫検出率はLCIで69.6%,WLIで63.2%といずれも高い結果だったが有意な差はなかった。

しかし,腺腫検出率が低い内視鏡医に特にLCIは有用であるという結果が得られた。一方,腺腫見逃し率は1回目の観察をLCIで行なうことで有意に低くなることが判明し,中でも小さな病変や平坦な病変で見易さが改善し,その結果見逃しを減らせることを示した。

また死角が多く見逃しが多いとされる上行結腸や横行結腸などの右側大腸でのLCIの有用性に加え,S状結腸や直腸など全大腸にわたって広く腺腫見逃し率が有意に減少することを示した。

これらの結果から,病変検出においてWLIよりもLCIが優れており,病変が切除された後に推奨される次回の大腸内視鏡検査時期をより適切に判断することで,検査間に発症する大腸癌の発生率を下げる可能性が示されたとしている。

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