富士キメラ総研は,車載電装システムやデバイスの世界市場について調査し,その結果を「車載電装デバイス&コンポーネンツ総調査 2021《上巻:システム/デバイス編》」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,車載電装システムの世界市場は2020年は新型コロナウイルス感染症流行の影響により,自動車生産台数が大きく減少するため,多くの品目が縮小し,市場は前年比15.4%減を見込む。
2021年には自動車生産台数は回復に向かうため,車載電装システムの需要も増加するとみる。2022年以降は電動自動車の構成比の高まりや,自動運転システムの搭載増加などにより,順調な市場拡大を予想する。
2020年に各分野が縮小する中,HV/PHV/EV/FCV系は前年比10.4%増を見込む。各国で環境規制対策が進められる中,内燃自動車の生産は落ち込むものの,電動自動車は順調に増加しているため。今後,各自動車メーカーは電動自動車の構成比を高める方針であり,それに伴い大きな成長を予想する。
走行安全系は,2020年は前年比17.6%減となるものの,2021年以降は自動車生産台数の回復と単価の高い自動運転システムの増加によって,回復・拡大を予想する。2025年以降,自動運転システムが大きく伸びることで,2030年には2019年比64.6%増を予測する。
パワートレイン系や情報系,ボディ系は2020年に大きく落ち込んだが,2021年以降は回復に向かい,2024年までには2019年の実績を超えるとみており,以降は順調な伸びを予想する。中でも,情報系のドライバーモニタリングシステムや電子ミラーは,現状の市場規模は比較的小さいものの,大幅な伸びが期待されるとしている。
デバイス&コンポーネンツの世界市場は,2020年は自動車生産台数の減少に伴い,市場は前年比7.3%減を見込む。ディスプレーやLEDなどの入出力系デバイス,レーダーや各センサーなどのセンサーモジュール/アクチュエーターモジュールが縮小した一方,HV/PHV/EV/FCV関連デバイスは堅調に伸びたという。
2021年以降はHV/PHV/EV/FCV関連デバイスがけん引し,市場拡大を予想する。また,センサーモジュール/アクチュエーターモジュールはADASの高機能化や自動運転車両の増加,電動化を背景としたセンシングデバイスやモーター駆動アプリケーションの増加などで伸びるとみる。入出力系デバイスはHMI(ヒューマンマシンインターフェース)の増加や,ドライバーへの伝達情報量の充実化に伴う表示機器の増加により,採用拡大を予想する。
調査では,ADAS/自動運転システム/ドライバーモニタリングを注目市場として取り上げた。このうちADASはカメラやレーダーからの情報をドライバーに警告,または自動で制御を行なう安全支援システム。市場はシステムを制御するECUとセンシングデバイスを対象とした。
2020年は自動車生産台数の減少に伴い,市場は前年比11.1%減が見込まれるものの,2021年以降は拡大を予想する。ADASを構成するセンサーの搭載個数は,エリアや車種によって異なるためシステム単価は上下するが,システム販売数の増加に伴い市場は拡大し,2030年は2019年比2.1倍を予測する。
自動運転システムは,LiDARをはじめとしたセンサーやHDマップ(高精度3次元地図)などを用いて周辺環境の検知や認識を行ない,自動制御を行なう。市場は立ち上がりつつあり,2021年にはレベル3のシステムが搭載された車両が新たに投入される予定。2025年頃からレベル4の車両が投入され,本格的に市場は拡大していくとみる。
エリア別では,当面は自動運転技術に注力する自動車メーカーの拠点が多い欧州がけん引するが,長期的には官民一体で自動運転技術の開発を進める中国が最大の需要エリアになるとみる。
現状,自動運転システムの単価は,LiDARなど多くのセンサーや高度なAIチップを搭載したECUを採用しているため,ADASの約10倍となっている。今後,LiDARの低価格化は進むが検知精度向上のための複数搭載,また,他センサー類も高機能製品の搭載が増えるとみており,システム単価が維持されることも市場拡大の要因となるとしている。
ドライバーモニタリングシステムは,車載カメラなどを用いてドライバーや同乗者の状態検知を行うシステムを対象とした。現状は近赤外線カメラを利用した検知が一般的だが,精度向上のために検出AIのアルゴリズムの高度化や,ミリ波レーダーや脈拍センサー,超音波センサーなどの生体センサーの利用や組み合わせも検討されているという。
2020年頃からドライバーの疲労検出を目的とした搭載が増えており,今後はドライバー監視機能の評価がEuro NCAPの適用対象となるため,今後も需要増加が期待されるとする。
自動運転車両では,現状ハンズオフ運転機能を有する自動運転レベル2の車両に搭載されている。また,自動運転レベル3から4の高度自動運転では,システムからドライバーへの運転タスク権限委譲の際にドライバーが運転可能な状態にあるかを確認するため搭載が必須になることが,市場拡大の追い風になるという。
今後は技術開発も加速し,ドライバーだけでなく助手席や後部座席で顔認識や状態検出を行なう高機能システムの導入も想定されるとしている。