原研ら,次世代太陽電池材料を高効率化・長寿命化

日本原子力研究開発機構,北京高圧科学研究センターらの研究グループは,太陽光発電材料として有望な有機無機ハイブリッドペロブスカイト(CH3NH3PbI3)について,水素の同位体置換を行なうことで,太陽電池としての性能を向上させた(ニュースリリース)。

有機無機ハイブリッドペロブスカイトは、圧力をかけて結晶格子を縮めることによって、発電性能を向上させることができる。その一方で、圧力をかけすぎると結晶構造が乱れてしまい、さらなる特性の向上ができなかった。

有機無機ハイブリッドペロブスカイト(CH3NH3PbI3)の構造の安定性には、メチルアンモニウムイオンの動的振る舞いが関与していると考えられる。そこで今回,研究グループは,メチルアンモニウムイオン(CH3NH3)の水素を重水素に置換した試料(CHCD3ND3PbI3)を用いて,高圧下での構造の安定性および,光起電力特性を調べた。水素をより重い重水素に置換することで,メチルアンモニウムイオンを動きにくくすることができる。

CH3NH3PbI3(H体)とCHCD3ND3PbI3(D体)の高圧下のフォトルミネッセンス強度は,H体では4千気圧までの初期加圧で約1.5倍になるが,さらに圧力を加えると発光しなくなるのに対し,D体ではその特性は失われることなく,発光強度は最終的に約3倍にまで達した。この原因を調べたところ,H体の方がD体よりも構造が不安定になりやすいことが示された。

さらに構造中のメチルアンモニウムイオンの動的振る舞いを赤外分光測定で調べると,メチルアンモニウムイオンの変角振動が,D体ではH体に比べ,より高い圧力まで安定に存在することが分かった。

シミュレーションにより,フレームワーク構成要素であるPbI6八面体が,H体ではD体に比べ低い圧力で歪み始め,この格子の乱れが結晶のバンド構造に影響して発光しなくなったと考えられるという。

また,約6万気圧から回収したH体は発光しないが,D体ではさらに高い圧力から回収したものでも発光することを示した。実際に,H体とD体で太陽光発電セルを作り,光電変換効率の時間変化を調べると,D体の方が劣化しにくいことが分かった。

これらの結果は,CH3NH3PbI3の水素を重水素に置換することで,高圧あるいは常圧下での構造の安定性が増し,光起電力特性や耐環境性能が向上することを示すもの。同位体置換による方法は,他のハイブリッドペロブスカイトにも応用でき,より安定で高性能なデバイスを設計するのに役立つとしている。

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