新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO),東京医科歯科大学,NMEMS技術研究機構は「経皮ガス計測デバイス評価用の清浄環境および極低濃度ガス発生装置」を開発した(ニュースリリース)。
生体から放出されるガス(生体ガス)に含まれる揮発性成分の中に,代謝・疾病との関係が明らかな成分も多く,疾病検査に有効な揮発性バイオマーカーになり得ると期待されている。
中でも,皮膚ガスには血液由来のガス成分(経皮ガス成分)が極微量含まれており,その経皮ガス成分を高感度に計測することで,非侵襲に血中成分濃度を評価できると考えられる。しかし,現状では,生体ガスに含まれる揮発性成分を超高感度に連続センシングできる装置は開発されていない。
そこで研究グループは,「薄膜ナノ増強蛍光による経皮ガス成分の超高感度バイオ計測端末の開発」に取り組み,「経皮ガス計測デバイス評価用の清浄環境および極低濃度ガス発生装置」を開発し,同大学に構築した。
この装置は,極めて清浄な気相環境を構築し,経皮ガス計測用デバイスを評価できる高精度な標準ガス[アセトンガス:60ppt(体積比率),精度±5%]を世界で初めて生成するもので,高感度ガス計測デバイスの評価(感度,応答性,選択性など)や,皮膚からの極微量な経皮ガスを計測できる。これにより代謝・疾病に関わる体内の揮発性成分を非侵襲に情報化することが可能になる。
今回,「高精度・極低濃度ガス発生装置」(ガステック製)と「クリーンブース」(ヤマト科学製)を組み合わせた。開発した装置での高精度・極低濃度ガスの生成では,温度調整精度±0.01℃以下,高精度のキャリアガス流量制御0.2~4L/min,5℃以下の低温での蒸気圧制御によりアセトンガス:60ppt(体積比率),精度±5%の達成に成功したという。
さらに高純度高圧ボンベガスのキャリアガスやガス成分の吸着を抑えた電解研磨の配管使用により,化学物質の混入や大気中の成分による汚染を大幅に低減する設計になっており,清浄な気相環境を用いることで,被験者の経皮ガス中に含まれる微量な化学成分の計測を高精度で効率的に実施することができる。
この事業では代謝・疾病に関わる体内の揮発性成分を,非侵襲性に情報化するバイオIoT社会の実現に向け,「気相バイオセンシング」,「薄膜ナノ増強蛍光」,「MEMS集積化」の各技術を融合した通信機能を持つ「超高感度ガス計測デバイス」を搭載した「小型ウエアラブル計測端末」を開発し,ウエアラブル・バイオセンシングの具現化を進めるとしている。