名市大ら,3D映像の細胞集団をソフトで自動追跡

名古屋市立大学,米コロンビア大学,九州大学,自然科学研究機構生命創成探究センターは,さまざまな先端的顕微鏡によって三次元ビデオとして撮影された100~1000個ほどの細胞を自動的に追跡して細胞活動の解析を可能にする初めての人工知能ソフト「3DeeCellTracker(スリーディー・セル・トラッカー)」を開発した(ニュースリリース)。

さまざまな顕微鏡技術が飛躍的に発達したことによって,多くの細胞の活動を三次元でビデオ記録することが可能となってきた。

三次元ビデオとして撮影された細胞の位置は時間の経過とともに動いていくので,それぞれの細胞を正しく認識して追跡するソフトが必要となる。しかし,三次元ビデオの中の数多くの細胞を追跡するソフトの実現は困難であり,世界中で「細胞活動の三次元ビデオ」のビッグデータが解析されないまま蓄積されてきた。

研究グループは,深層学習を用いることで,三次元ビデオデータ中の数多くの細胞をほぼ自動的に追跡することに世界で初めて成功した。生命科学研究の画像データの解析では一般的に数多くの細かい調整(パラメータ設定)が必要だが,このプログラムは深層学習によりこの調整がすぐに済むという。

さらに,深層学習技術が持つ高い柔軟性により,日本や米国のさまざまな研究室の大きく異なる最先端顕微鏡によって撮影された細胞活動を,わずかな設定の変更によって追跡および解析することができた。具体的には,線虫の脳の神経細胞や熱帯魚ゼブラフィッシュの心筋細胞(共におよそ100個),そしてガン細胞およそ1000個の三次元集団の解析に成功した。

このプログラムは現在広く使われているPythonというプログラム言語で書かれており,一般に販売されているGPU付きのデスクトップPC上で動かすことができる。過去の研究では計算センターの高性能計算機システム(200コアのPCクラスター)が必要だった複雑な三次元ビデオ画像も,1台のGPU付きデスクトップPCで解析することに成功した。

現在,人工知能技術を用いたビッグデータ解析などによって生命科学研究のデジタルトランスフォーメーションをめざす「バイオDX」が注目を集めている。解析されないまま蓄積されている「細胞活動の三次元ビデオ」というビッグデータの自動的かつ大量の解析を可能にするこの人工知能ソフトは,小型実験生物などを用いた基礎生命科学研究やガン細胞に対する薬剤開発のような応用研究における,画像解析のデジタルトランスフォーメーションに大きく貢献するとしている。

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