東北大,光ファイバーセンサーで火山地震を観測

東北大学は,光ファイバーケーブルとDAS(分散型音響計測器)により,超高密度多点の火山性地震モニタリングが行なえることを初めて示した(ニュースリリース)。

光ファイバーケーブルの一端にDASを接続するだけで,数十kmにわたり数m間隔で地震動をひずみ速度として計測することができる。今回,研究グループは,この計測システムを火山地域に展開し,はじめて火山性地震を捉えることに成功した。また,溶岩流などの火山特有の地形の特徴が,地震波の地盤増幅率とよく相関していることを示した。

火山性地震や火山性微動は,地下の火山性流体(マグマや熱水)により発生していると考えられていることから,その発生場所を明らかにすることにより,火山活動の評価や噴火発生の予測に利用することができる。しかしながら,P波やS波が明瞭な火山性地震は限られ,火山性微動はそもそも位相が不明瞭なため,通常の地震で使われるP波やS波の着信時刻を利用した震源決定ができない。

研究は,磐梯吾妻スカイラインの道路脇に国土交通省が敷設している光ファイバーケーブル(地中50cm程度)を借用し,南端の土湯に DAS(hDVS)を接続した。DASは,入射した光が光ファイバーケーブル内で散乱し,戻ってくる波の位相の揺らぎをもとに振動を計測する。

3週間ほどの観測では,光ケーブル沿いに10m間隔で火山性地震波を捉えられることを利用し,波形相関を利用して着信時差を読み取り,震源決定を行なった。また,地震波が震源から距離に従って減衰する特徴を利用した震源決定を行なった。

その結果,火山活動を評価する上で十分な精度で震源決定をすることに成功した(P波やS波の読み取れる火山性地震の位置と500m程度の差で求められた)。

火山体は溶岩流や火山灰で覆われ,また,地下には熱水や岩脈などがある。このような火山特有の地形は,数百m程度のスケールであるため,従来の地震観測では空間分解能が十分でなかった。今回,光ファイバーケーブルとDASで記録された東北地方周辺で発生する地震の相対振幅を測定し,火山体浅部の地盤構造の増幅係数を調べた。その結果,溶岩流や火砕物の堆積物,浸食された地形とよい相関があることを示した。

従来の観測システムは,噴火発生時には地表部分が故障する可能性がある。一方,光ファイバーケーブルは地下に埋設されていており,火口から離れたところにDASを設置すれば被災することはない。火山性微動の震源決定も行なえることから,火山活動・噴火活動のモニタリングでの有用性が示されたとしている。

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