九州工業大学は,開発した光触媒が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の不活化にも高い効果を発揮することが実証されたと発表した(ニュースリリース)。
光触媒(酸化チタン)とは,紫外光を照射することにより粒子内に電子と正孔が生成し,その表面で生成した正孔による強力な酸化力が生まれ,接触してくる有機化合物,細菌,ウィルスなどの有害物質を分解することができる。
研究グループは,光触媒粒子の形状を制御することで酸化反応と還元反応の場を分離制御して(電子と正孔の分離に成功→電荷分離)光触媒の性能を飛躍的に向上させた。さらに,その表面に金属イオンを特殊な技術で固定化することで,反応光を紫外線から40 lx程度の室内光(可視光)領域まで拡大させることにも成功している。
これら技術を組み合わせることにより開発した棒状(ロッド状)の次世代型酸化チタン光触媒について,室内光を使った化学物質(アセトアルデヒド)の分解性能を調べた結果,一般的に使用されている窒素添加酸化チタンより約4倍の分解性能を確認したという。
様々な環境(光の強度,人の出入りの違い,部屋の開放度の違い)下においてフィールド試験を実施したところ,非常に高い殺菌性能を得たという。事例の一つでは,平均化した付着菌数の推移が,36日後で95.5%減少,101日経過後も95.7%減少と,高い光触媒性能(殺菌性能)を長期間にわたり維持していることを明らかにした。
さらに研究グループは今回,外部検査機関「北京京畿分析测试中心有限公司」(中国北京市)に依頼し,新型コロナウイルスに対する不活化試験を行なった。試験は,調湿用ろ紙を敷いたシャーレに入れた5cm×5cmの検体(光触媒抗菌加工及び無加工)の表面に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)浮遊液を滴下後,白色蛍光灯照射下で24時間室温保存し,新型コロナウイルス感染価を測定した。
その結果,平均すると,326,106個あったウイルスが光照射後は約150個まで減少した。ウイルス減少の割合(=不活化率)は99.95%を確認し,この光触媒が新型コロナウイルスにも高い有効性を持つことを確認したとしている。