住友化学は,液浸ArF(フッ化アルゴン),EUV(極端紫外線)などの最先端プロセス向け半導体フォトレジストについて,大阪工場の製造ラインを増設し,生産能力を引き上げると発表した(ニュースリリース)。新製造ラインの稼働開始は2022年度上期を予定している。
同社は各種ファインケミカル事業で培った有機合成技術をベースに製品設計・評価技術を確立し,大阪工場を中心とした製造・研究・販売集約によるタイムリーな顧客対応力などを生かして事業を拡大してきた。
特に,微細化工程で主として使用される液浸ArF露光用レジストについては,性能優位性と品質安定性により世界的に高いシェアを占めているという。また,新たな光源であるEUV露光用レジストについても,採用が決定している有力顧客の量産化スケジュールに応じて出荷の増加を見込むとともに,着実な新規受注獲得に向けてさらなる微細化ニーズに沿った開発を進めているとする。
19年度には,先端フォトレジストプラントを新設したことに加え,開発効率向上や品質保証体制強化を目的としたクリーンルームの新棟建設および新規評価装置の導入計画を決定した。これら直近3年間の投資額は100億円を超えているといい,一連の供給体制整備の一部は経済産業省の「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」の対象事業に採択されている。
半導体デバイス市場は,5Gスマートフォン需要の増加に加え,在宅勤務などライフスタイルの変化に伴いパソコンやデータセンター関連機器の需要増加を背景に伸長を続けており,液浸ArFをはじめとする先端フォトレジストの需要は今後も年率6%の拡大が見込まれている。そのため,同社は今回,先端フォトレジストプラントに新たな製造ラインを増設し,同プラントの生産能力を約4倍に引き上げる。
同じく22年度上期に完成予定である開発・評価体制強化に向けた新棟建設と合わせ,22~24年度の次期中期経営計画期間において飛躍的な事業規模拡大を目指す。なお,半導体市場は今後も継続的な成長が見込まれることから,25年頃には同社の生産能力は逼迫が予想されるため,長期的な需要を見据えて一層の体制強化を検討していくとしている。