東大ら,人工知能で磁石の磁気パラメータを推定

東京大学,電気通信大学,豊田工業大学,岐阜大学は共同で,人工知能を利用して画像から磁石の磁気特性を推定することに世界に先駆けて成功した(ニュースリリース)。

スピントロニクス分野では,材料の磁気特性の評価に特殊な測定法が必要になる場合が多く,研究開発上の課題となってきた。例えば,ジャロシンスキー守谷相互作用(DMI)と呼ばれる磁気パラメータは最も重要である一方,簡単に評価できる手段が確立されていない。

機械学習は特に画像認識の分野では畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の開発によって,高精度な認識が実現しており,人間の眼では気付かないわずかな特徴を捉えることができる。研究グループは,今回,このCNN技術を利用して磁気情報を含む画像を解析し,DMIのような磁気パラメータを取得することを試みた。

磁石の中には「磁区」と呼ばれる,それぞれの領域内でN極の向きが揃った区画が整然と並んでおり,N極の向きをマッピングした画像を取得・解析し,磁区模様の特徴を捉えることができれば,磁気パラメータの推測が可能となる。

研究ではまず人工知能が学習するための教師データと,学習した人工知能の精度を評価するためのテストデータを準備した。大量のデータが必要となる教師データには,マイクロマグネティックシミュレーションを利用して,教師データとなる磁区画像を作成した。テストデータには実験から取得した磁区画像を用いて,DMIの値(D値)を推定できるか調べたところ,この機械学習が有効であることがわかった。

学習を行なった人工知能を用いて,次はテストデータに実験から得られた磁区画像を用いてD値を推定した。その結果,機械学習と画像認識を用いることで,微細加工や電気測定なしに,評価が難しい複数の磁気パラメータを磁区画像から取得できることを実証した。

マイクロマグネティックシミュレーションを用いて種々の磁気パラメータの組み合わせに対応する磁区模様の教師データを生成した上で,機械学習によって人工知能を上手く学習させることが実現できれば,その情報をデータベース化することで,調査したい材料,構造の磁区画像を入力するだけですべての磁気パラメータを手に入れることが可能となる。

研究グループは,今後,多くの労力を割かざるを得なかった材料の特性評価が簡便になることで,研究開発のアプローチに変革をもたらすことが予想されるとしている。

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