国際科学技術財団は,2021年Japan Prizeの受賞者を発表した。今回の対象2分野について,「資源,エネルギー,環境,社会基盤」分野はマーティン・グリーン博士(豪)が単独で,「医学,薬学」分野はバート・フォーゲルシュタイン博士(米)とロバート・ワインバーグ博士(米)が共同で,それぞれ受賞となった(ニュースリリース)。
受賞業績は,グリーン博士が「高効率シリコン太陽光発電デバイスの開発」,フォーゲルシュタイン博士とワインバーグ博士が「多段階発がんモデルの提唱と実証及びそれらがもたらしたがん治療への貢献」。
このうちマーティン・グリーン博士は1948年7月20日生まれの72歳。豪ニューサウスウェールズ大学で教授を務める。1970年代から結晶シリコン太陽光発電デバイスのエネルギー変換効率を高める研究に取り組み,「電子と正孔の再結合を抑制することが重要である」として,さまざまな技術を提案してきた。
中でも1999年にエネルギー変換効率24.7%(2008年に基準の変更で25.0%と認定)を達成したPERC構造は,従来の技術に加えて,表面および裏面全体を酸化させて不活性化(パッシベーション)したり,シリコンと電極の界面をなるべく小さくして局所拡散を行なうことで,それぞれの場所で再結合が起こるのを抑えるもの。
PERC構造は現在,多くの結晶シリコン太陽光発電デバイスに採用されている。また,博士が育てた多くの人材は,世界各地で大規模太陽光発電デバイスを事業化し,太陽光発電の普及に貢献しているという。
同賞は国内外約14,000名の著名な科学者や技術者に依頼し,「資源,エネルギー,環境,社会基盤」分野で142件,「医学,薬学」分野で243件の推薦を受けた。これら385件の候補の中から,今回の受賞者を決定した。