名大ら,可視光で概日リズムの可逆的な操作に成功

名古屋大学,蘭グローニンゲン大学らは,化合物の一部を光スイッチに置き換えることで,時計タンパク質のCRY1の機能と概日リズムの周期を光によって可逆的に操作することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

研究グループは化合物が概日リズムに与える影響をヒトの培養細胞を用いて大規模に解析する手法を確立し,化学と生物学とを融合させたケミカルバイオロジーの手法を応用することで,1日周期の決定に関わる重要な分子機構を明らかにしてきた。

今回,概日リズムの周期を延長させる新たな化合物として大規模解析から見出したTH303およびその類似化合物であるTH129の作用メカニズムを解析したところ,両者は時計タンパク質であるCRY1に対して選択的に作用することを見出した。X線結晶構造解析により,TH303とTH129がCRY1の構造を変化させることを明らかにした。

さらに,TH129の一部を光スイッチであるアゾベンゼンに置換した化合物GO1323を合成して光応答を解析した結果,紫外光と白色光によって構造変化すること,光に依存してCRY1と相互作用することがわかった。

あらかじめ紫外光を照射したGO1323 をヒト培養細胞に投与して概日リズムに与える影響を解析した結果,光を当てなかった場合(暗所)と比べて周期が延長することを見出した。さらに,この細胞に白色光を照射したところ,周期延長効果が消失した。すなわち,概日リズム周期の光による可逆的な操作が可能となった。

しかしながら,紫外光は細胞毒性を示すことから,細胞への照射には向いていない。そこでテトラオルトフルオロアゾベンゼンをもつGO1423を合成した結果,この化合物は緑色光と紫色光によってそれぞれ高い効率で構造変化した。

GO1423を細胞に投与した後に緑色光を照射したところ<光を当てなかった場合(暗所)と比べて周期が延長し,さらに紫色光を照射したところ,周期延長効果が消失した。以上の結果から,可視光を用いて概日リズムの周期を可逆的に変化させることに成功した。

今回得られたGO1423は,有用な研究ツールとしてCRY1の機能解明に役立つことが期待される。CRY1は睡眠相障害や糖尿病,がんなどにも関与することから,研究グループは,将来的にはGO1423の誘導体の解析がこれらの疾患の治療に役立つとしている。

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