東大ら,原子の振動からスピン流を生む機構を発見

東京大学と名古屋大学は,スピン軌道相互作用の大きな重金属中で発現するまったく新しい振動-スピン流変換機構の存在を,簡便な電気測定で明らかにした(ニュースリリース)。

スピントロニクスの研究においては,スピンと他の物理量の結びつきを解明することが重要なテーマとなっている。近年,回転や振動,変形といった物体の力学的運動とスピンの相互変換が注目されているが,力学的運動に由来するスピン変化の検出が難しく,さらなる実験的研究が求められている。

研究では,圧電基板上に作製した1対の櫛形電極の間に重金属と強磁性体(コバルト鉄ホウ素)からなる厚みが数nmの薄膜を製膜し,表面弾性波を伝搬させたさいに発生する直流起電力を詳細に調べた。

タングステンなどの重金属中では,電子の軌道運動とスピンが結びつくスピン軌道相互作用が大きいため,表面弾性波に伴う電子の運動がスピンに変換されることが期待される。また,磁場によって強磁性層の磁化の向きを変えながら起電力の測定を行なうことで,発生したスピン変化を検知できるのではないかと予想した。

実際にタングステン/強磁性ヘテロ構造を用いて測定を行なった結果,表面弾性波の伝搬時に,磁場の向きに関して90°周期で変化する直流起電力が発生することを見出した。タングステンなどの重金属中では,電子の軌道運動とスピンが結びつくスピン軌道相互作用が大きいため,表面弾性波に伴う電子の運動がスピンに変換されることが期待されるという。

また,磁場によって強磁性層の磁化の向きを変えながら起電力の測定を行なうことで,発生したスピン変化を検知できるのではないかと予想した。実際にタングステン/強磁性ヘテロ構造を用いて測定を行なった結果,表面弾性波の伝搬時に,磁場の向きに関して90°周期で変化する直流起電力が発生することを見出した。

タングステンをスピン軌道相互作用の小さな物質である銅に置き換えて測定を行なうと,そのような起電力は観測されなかった。この結果は,表面弾性波がスピン軌道相互作用を介して重金属中でスピン流を生成したこと,および重金属/強磁性ヘテロ構造を利用して表面弾性波由来のスピン変化を電気的に検出できたことを意味する。

さらに,研究では得られた実験結果を説明するためのモデル構築にも取り組んだ結果,原子振動がスピン軌道相互作用を介して電子スピンと結合する新規な相互作用を仮定することで,実験結果を説明できることが分かった。

この成果は,スピンを用いた微細デバイスの制御や,身の回りのあらゆる振動から電力を取り出す新規な発電素子の実現につながるものだとしている。

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