矢野経済研究所は,産業用センサー(環境センシング関連)世界市場を調査し,種類別や参入企業各社の動向,将来展望などを明らかにした(ニュースリリース)。
それによると,近年,環境問題への取り組み活発化やIoT技術の進展,産業機器の高性能化などの流れの中で,環境センシングに対する注目度は高まり,産業用センサーの需要が拡大しつつある。
この調査では主に各種環境を計測する産業用センサーの中から6種類のセンサーを対象とした。2020年の産業用センサー(環境センシング関連)世界市場規模を,メーカー出荷金額ベースで前年比92.3%の1兆1,360億円と予測した。
6種類の構成比をみると,ガスセンサーが最も大きく,出荷金額(2020年)全体の約35%を占めている。次いで磁気センサーは約20%,以下UVセンサー,環境光・調光センサー,微粒子計測・PMセンサー,湿度センサーの順となった。
調査では注目トピックとして,車載用磁気センサーの動向に注目している。近年,車載用センサーの搭載数が増加しており,リードスイッチを含めると2019年には大衆車クラスでも1台当たりの搭載数が平均75個前後(ブラシレスDCモーター用ホール式センサーは除外)に達したものと推計している。
そのうち,50%以上が磁気センサーとみなされるが,これにブラシレスDCモーター用の磁気センサーを含めると,1台当たりの磁気センサーの搭載数は60個以上に達するという。
車載用磁気センサーのタイプ別内訳はホール式センサーの比率が高く,金額ベースでも全体の59.2%(約610億円)を占める。以下,MR式センサーが同26.2%(約270億円),リードスイッチが同10.7%(約110億円),フラックスゲート式センサーが同3.9%(約40億円)となったとする。
今後はMR式センサーのシェアが漸増すると見込むが,リードスイッチ以外はどのタイプでも非接触型で耐久性もあるため,電装化率が一段と進展する中で引き続き磁気センサーが重要な役割を果たすとしている。
今後,環境意識が高まる中で環境センシングへの需要は拡大すること,IoT関連技術に加え,車載用や産業用機器の高性能化が実現することなどから,2024年の産業用センサー(環境センシング関連)世界市場規模を,メーカー出荷金額ベースで1兆4,540億円に達すると予測した。
すでに1兆円を越える大きな市場であるが,2019年から2024年までのCAGR(年平均成長率)は3.4%になると見込んでいる。
種類別にみると,成長率が一番高い磁気センサーの2019年から2024年までの年平均成長率は5.6%に達する見通しだという。ガスセンサー市場は,車載用や産業機械用の高精度化要請に対応して,さまざまな新型製品が登場する見込みで,2023年頃から新たなステージに移行するとしている。
一方で,2019年から2024年までの年平均成長率が最も低いのはガスセンサーで,2.0%となる。ただ,ガスセンサーは市場規模としては6市場中一番大きく,4,000億円を超えているという。
また,「2030年までに地球温暖化ガスを1990年比で40%削減する」目標を掲げた2016年のパリ協定の影響により、製造業全般でCO2監視ニーズが高まり,既にCO2センサーの需要は世界的に増大しているとする。
また,車載用センサーの分野でも排ガス規制が一段と強化される中で,環境汚染ガスの代表例とされる窒素酸化物(Nox)の排出量を低減する排ガス用酸素センサーやNoxセンサーの需要が増大して,大きな市場を形成するようになったとしている。