2025年,殺菌用深紫外線光源市場は1342億円に

富士経済は,空気中や表面に存在するウイルスの不活化や殺菌が可能なことから新型コロナウイルス感染症対策で注目される深紫外線光源,それらが搭載される民生・業務分野のアプリケーションの世界市場を調査し,その結果を「新型コロナウイルス対策で注目される深紫外線技術の事業性分析調査」にまとめた(ニュースリリース)。

この調査では,深紫外線光源として深紫外光LEDと深紫外線殺菌ランプ(水銀ランプ,エキシマランプ・その他)を,アプリケーションとして小物家電2品目,設備機器4品目,空間殺菌/医療用装置2品目の市場の現状を明らかにし,将来を展望した。

深紫外線殺菌技術は,1930年代に紫外線殺菌灯が発売されて以降,多様なシーンで用いられている。主な需要は産業分野における水殺菌やプロセス殺菌だが,新型コロナウイルス感染症対策の有効な手段として民生・業務分野で深紫外線による空気・表面殺菌へ注目が集まっている。

調査によると,空気・表面殺菌は需要が限定的だったことから,2019年の市場は30億円だった。しかし,新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により,深紫外線による空気・表面殺菌へ注目が集まり,アプリケーションの需要増加や搭載率上昇などで,2020年は前年比7.5倍の226億円を見込む。

2020年は,空気清浄機や空調機器で深紫外光LEDの需要が大幅に伸びているという。また,技術成熟度が高く,エビデンスが豊富な水銀ランプも,病院など医療機関でAGV(無人搬送車)にランプを搭載した殺菌ロボットなどの導入が進んでおり,こちらも伸びているという。

一方で,水銀ランプは殺菌作業時に無人にする必要があることから,日系企業が新たに販売を開始した,有人環境下でも使用できるエキシマランプへの注目度が高まっているとする。

現状は特需がみられる状況だが,沈静化しても衛生を意識した新しい生活様式の定着や搭載アプリケーションの普及により市場は拡大していくとして,2025年には2019年比44.7倍の1,342億円を予測した。

深紫外光LEDは開発途上であり,水銀ランプと比較し出力が低いことから,ハンディ照射器やケース型照射器,空気清浄機など,家電向けが中心となる。2020年は,空気清浄機など以前から搭載されていたアプリケーションの需要増加に加え,ルームエアコンや車載機器など,設備機器でも本格採用や搭載製品の開発が進んでいるという。

水銀ランプは,広範囲照射が求められる空間殺菌/医療用装置をはじめ,設備機器などで幅広く採用される。一方で,皮膚や目を損傷する危険性などから使用時は無人にする必要があり,アプリケーションごとの紫外線照射に関するガイドラインや標準規格が未整備な点が,課題となっている。

エキシマランプ・その他では,ウイルスの不活化や殺菌の能力を保有しながら,人体への悪影響が少なく,有人環境下でも利用可能な222nm紫外線エキシマランプが注目されているという。量産技術の向上やエビデンスの構築・強化が進むことで,従来なかった用途・シーンでの採用拡大が期待されるとしている。

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