国立天文台(NAOJ),アストロバイオロジーセンターの研究者を含む国際研究グループは,すばる望遠鏡の新しい系外惑星撮像装置と系外惑星を直接に探査するための新しいアイデアを組み合わせることにより,これまでより効率的に恒星を周回する新天体を発見することを可能にし,この手法による最初の超低質量天体HD 33632 Abを発見した(ニューリリリース)。
すばる望遠鏡に搭載されている「SCExAO」(スケックスエーオー)と「CHARIS」(カリス)は系外惑星や恒星まわりの円盤を観測するための最新鋭装置。
SCExAOは,あたかもすばる望遠鏡を大気の揺らぎのない宇宙に打ち上げたようなシャープな星像を作る極限的な補償光学系であり,CHARISは天空の微小な面の各点のスペクトルを一度に取得できる面分光の機能を持っている。
この両者を組み合わせることによって,これまでにない高いコントラストで天体を撮像し,同時にそのスペクトルを観測することが可能になる。このシステムは約2年間にわたってすばる望遠鏡で調整を進められ,いくつかの天体の観測で既に成果を挙げてきた。
今回,研究グループにより,この新システムによって超低質量天体(褐色矮星)HD 33632 Abを新たに発見した。HD 33632 Abは,年齢は15億年と太陽よりは多少若いものの,それ以外の特徴は我々の太陽と似ている恒星を周回しているという。
さらに,新装置によって得られた非常にシャープな画像のおかげで,HD 33632 Abは発見されただけでなく,天球上での正確な位置や天体の大気の性質を解明するためのスペクトルまで得られた
ぎょしゃ座の方向,地球から86光年の距離にあるこの天体は,既知のHR 8799と異なる年齢や重力のため,温度が違う超低質量星(惑星や褐色矮星)の大気の違いを理解するために最適な天体であり,重要な発見だとしている。