大阪大学は,世界最高精度のナノ立体造形技術によって,未踏であった50nmサイズの強相関金属酸化物ナノ構造体の作製を実現し,物性起源にアクセスすることで,物性発現最小単位である数十nmサイズのナノ電子相の直接計測を達成し,一次相転移特性,転移点の分布などのナノ相転移特性を実験的に初めて解明した(ニュースリリース)。
強相関金属酸化物はわずかな外部刺激で金属-絶縁体転移を起こし,巨大な抵抗変化を示すことから将来の高速スイッチング・メモリ材料として注目されているが,相転移発現機構が複雑であるなどの理由から研究が進んでいなかった。
試料をナノメートルサイズまで縮小すると,バルクや薄膜と言ったマクロサイズの試料中では埋没(平均化)していた性質が顕在化するなど,ナノ領域での特異構造に起因する特性が現れ,よく知られている量子効果以外にも新たな物性変化が発現する。強相関金属酸化物では,これらのナノ領域での特性は議論されながらも,複雑すぎるなどの理由で本質に迫る研究が実現していなかった。
研究グループは,独自の3次元ナノ構造創製技術を開発し,多様な機能性酸化物材料に対して50nm以下サイズで完全位置制御3次元ナノ構造体の作製を実現してきた。これらの位置・形状・サイズを規定した立体ナノ構造体の創製が可能なのはこの研究グループのみの独創的なもので,これにより強相関金属酸化物の物性起源であるナノ電子相ドメインの閉じ込め(隔離)を可能とし,単一ナノ電子相の金属-絶縁体転移特性の計測に成功してきた。
今回,世界最高精度のナノ立体造形技術によって,未踏であった50nmサイズの強相関金属酸化物ナノ構造体の作製を実現し,物性起源にアクセスすることで,物性発現最小単位である数十nmサイズのナノ電子相の直接計測を達成し,一次相転移特性,転移点の分布などのナノ相転移特性を実験的に初めて解明した。
強相関酸化物という動的不均質系でのデバイスの実現は,終焉が見えつつある0/1応答するシリコンの代替だけではなく,相転移現象を利用した多値応答(0,1,2….,n)かつ選択的な機能創出という知能デバイス(脳型チップ)への展開が期待できるという。
また,ナノ構造と物性の関係の解明は,ナノ物性物理学術分野の発展だけでなく,その特異性を安定化させる機能活性化の方法論を確立することで,機能活性化した材料の開発,また高感度センサー,低消費駆動急峻応答スイッチなど現行の半導体デバイスより2桁以上効率を増大化したナノデバイスの具現化として産業界に貢献できるものだとしている。