東京大学は,360度映像で,歩行視点映像群を用いた“ムービーマップ”技術を構築し,東京大学本郷キャンパス内の映像によるバーチャル探訪を実現した(ニュースリリース)。
ムービーマップの原点は,1980年のAspen Movie Mapに遡る。そこではあたかも市内をドライブするような映像を見ることができたが,アナログ技術ベースのものであり,膨大に労力がかかることから,同様のものは二度と作られなかった。
その後、地図に対応する画像の提示についてはGoogle Street Viewが2007年に現れ,2013年からは,Mapillaryというユーザ投稿のジオタグ付き画像,映像の共有サービスがはじまった。しかし,この両者のサービスでユーザに提示されるのは“静止画像”であり,視点の移動はスライドショーのようにコマ送りして見せるにとどまっている。
それに反し,このムービーマップでは“動画”を提供するので,交通の様子,人の動きなど,その場の様子をよりリアルに伝えることができる。Google Street Viewとこのムービーマップの利用について,16名の実験参加者によるユーザスタディでの比較を行なった。
その結果,ある特定地域の“目標”を画像で与え発見させるという課題では,インタフェースの“使いやすさ”では有意な差がないものの,“実際にその地域を探訪している感覚”では,大きな優位性を示すことが確認されたという。
商業地域や観光地域などの特定地域にこの技術は容易に活用できる。いったん360度映像を撮像すれば,そのあとは,ほぼ自動的に映像データベースが構築でき,映像で地域を探訪することができる。対象地域を訪問するにあたり,事前・事後に地域の様子を確認・記録できるだけでなく,外出自粛,高齢者や障害など様々な理由で訪問することができない状況下でも,その地域をバーチャルに探訪するためのツールとなると,研究グループは期待する。
さらに,バーチャルビルボードを映像内に提示することで,お店の情報,名所の情報,バリアフリーの情報など,使用目的に応じ情報をカスタマイズして提供することも容易となる。東京大学と共同で開発をするブイテック研究所では,この技術をベースに,なんば駅周辺の実証実験を近く行なう予定だとしている。