NTTら,「磁性ワイル半金属状態」の存在を実証

著者: sugi

日本電信電話(NTT)は,SrRuO3[Sr(ストロンチウム),Ru(ルテニウム),O(酸素)からなる化合物]の極めて高品質な単結晶薄膜を作製し,東京大学とその低温,磁場下での電気伝導を測定することにより,「磁性ワイル半金属状態」と呼ばれるエキゾチックな状態に特有の量子的な電気伝導特性を世界で初めて観測した(ニュースリリース)。

近年,物質が示す性質がトポロジーによって理解されるトポロジカル物質と,その中で発現する特異な状態に関する研究が盛んに行われている。しかし,そのような特異な状態のうち,「磁性ワイル半金属状態」というエキゾチックな状態が示す物性は,理論的予測が大半で,実験的には未解明な点が多く残っていた。

NTTは,独自の酸化物合成技術と,機械学習を援用した作製条件の最適化(プロセスインフォマティクス)により,最高の残留抵抗比を持つ極めて高品質なSrRuO3薄膜の作製に成功した。残留抵抗比は84を超え,SrRuO3薄膜における残留抵抗比の記録を20年ぶりに塗り替えた。

さらに東大と共同で,このような高品質な薄膜試料を用いて,低温,磁場下での電気伝導特性を測定することにより,「磁性ワイル半金属状態」に特徴的な量子的な電気伝導特性を世界で初めて実証した。この状態に特徴的な伝導特性は,低温かつ高い残留抵抗比をもつ領域で観測され,試料の品質が本質的に重要であることを示した。

一般に,物質中に「磁性ワイル半金属状態」が存在した場合,その状態が持つ,①線形な分散関係,②時間反転対称性の破れ,③トポロジカルな性質に由来して,5つの特徴的な電気伝導特性が観測されると予想されていた。研究では,この5つの特性すべての観測に成功した。

なかでも,試料中での電子の散乱が抑制される超高品質試料でのみ発現する量子振動を観測できたことは特筆に値するという。この量子振動の観測から,磁性ワイル状態を形成する準粒子(ワイル粒子)が,特徴的な電気伝導のうち,・軽いサイクロトロン質量と・高い量子移動度を持つこと,また・ベリー位相シフトを示すこと,を実証した。

また,東工大と行なった密度汎関数理論に基づく計算により,SrRuO3中に磁性ワイル半金属状態が実現することを実証した。酸化物中に「磁性ワイル半金属状態」が存在することを示した初めての研究成果であり,今後の新物質開発の指針となることが期待されるとともに,将来的に新原理で動作する量子素子(デバイス)の設計等に資するものだとしている。

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