すばる望遠鏡を用いた研究グループは,楕円銀河M105を取り囲むように散らばっている惑星状星雲の分布を測定することにより,低金属量の古い星々が銀河の周りに広く存在していることを明らかにした(ニュースリリース)。
宇宙の標準モデルでは,最初に小さな構造が形成され,それらが集合してより大きな銀河や銀河群が形成されたと考えられている。この場合,銀河と銀河の間にも星々が取り残されると考えられており,銀河同士の隙間に散らばった星々を探し,それらがいつ生まれたのか明らかにすることが重要になる。
観測は,すばる望遠鏡の主焦点カメラ Suprime-Cam(シュプリーム・カム)と,ウィリアム・ハーシェル望遠鏡に取りつけられた分光器 Planetary Nebula Spectrograph(PN.S)を用いて行なわれた。M105周辺の惑星状星雲をこれまでになく広い範囲で見つけだすために,Suprime-Camの広い視野が威力を発揮したという。
観測の結果,M105の中心から16万光年も離れた領域にまで惑星状星雲が分布していることが明らかになった。これは,M105の有効半径の18倍に相当する広がりで,可視光の広帯域フィルターで観測される光の広がりから推定した通常の星の分布に比べると,明らかに大きな広がりとなり,M105の外側では年老いた星が際だって多く存在しているということになる。
惑星状星雲の前身である赤色巨星についての過去の観測と比較した結果,金属量が非常に少ない古い星は,惑星状星雲と同じ分布傾向を示していた。過去に赤色巨星の分布が調べられたのは,銀河の周辺の狭い範囲に限られていたが,今回の結果からM105外縁部では惑星状星雲と同じく金属量が非常に少ない古い星が銀河の周辺に広く分布していると結論した。
これは,楕円銀河外縁部での惑星状星雲の分布と低金属星の関連を初めて明らかにしたという点で画期的な成果だという。これらの古い星々からの光は,M105の明るさの4%だが,その広がりは銀河の大きさの18倍にまでおよんでおり,ダークマターの質量や構造に制限をつけるのに格好の材料となっているという。
研究グループは,今後,広範囲に分布する惑星状星雲の運動を測定し,ダークマターの分布を仮定した力学モデルと比較することによって,例えば,ダークマターが一つの大きな塊としてか,あるいは複数の小さな塊として存在するのかということまで区別できるだろうとしている。