順天堂大学は,世界初となる3次元オンライン診療システムを開発した(ニュースリリース)。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い,感染リスクを最小化しつつ安全かつ安心に専門医への通院を継続できる社会基盤の整備が急務となっている。こうした方法の一つに遠隔医療(テレメディシン;Telemedicine)がある。神経難病に対する遠隔医療技術として,ビデオ通話機能を用いた2次元のオンライン診療があるが,パーキンソン病患者では運動症状を医師が詳細に把握しにくいなどの課題があった。
研究では,遠隔地にいる患者を,マーカレス3次元モーションスキャナー(Kinect v2)を用いて,3次元動作情報をリアルタイムでスキャンし,離れた場所にいる医師のもとに3次元動作情報を複合現実(Mixed Reality)を実現するヘッドマウントディスプレー(HoloLens)を介して再構築し,まるで患者が目の前にいるかのように診察できる双方向性3次元オンライン診療システム「Holomedicine(ホロメディスン)」を開発した。
このシステムではヴァーチャルリアリティ(VR)ではなく,現実とヴァーチャルを融合した複合現実を用いることで,患者も医師も,お互いのいる環境に相手が来て,対面しているかのように見ることができる。また,音声通話機能も搭載しているため,このシステムのみで診察を完了することができるという。
今回,実際にパーキンソン病患者100名に対して,このシステムを用いてパーキンソン病の運動症状のスコアを評価したところ,信頼性が高い結果となったことから,対面診療の代わりとして評価に用いることができることが示された。このシステムは,運動障害および神経疾患を3次元かつ遠隔でとらえることができるため,未来のオンライン診療の可能性を広げる大きな一歩になると考している。
5Gといった高速通信との併用で,患者は家にいながらにして,まるで病院の診察室に来たかのように診察をうけることが可能になるため,通院が困難な運動障害患者であっても,通院の時間や費用を軽減でき,不要な感染リスクを減らすことにつながる。今後さらに,マイクロソフトの最新デバイス(HoloLens 2およびAzure Kinect)によるシステムの改良を行ない,さらに精度を高める予定。
この研究成果をもとに,診察時の3次元動作情報のデータをクラウドデータベースに蓄積し,AIによる機械学習・深層学習を用いた運動障害疾患患者の動作情報の解析を進めることで,専門医以外でも診察することができるようになることが期待できるとしている。