富士経済は,5GやAI,自動運転車などの普及に伴い,需要増加が予想される半導体用材料の市場を調査し,その結果を「2020年 半導体材料市場の現状と将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,2019年はメモリー価格の暴落に伴い在庫調整が進められたことから,シリコンウエハーを中心に多くの半導体用材料の需要が減少した。しかし,メモリーの高層化に欠かせないCMPスラリーや炭化フッ素系ガス,テトラエトキシシラン,高純度薬液,ポリマー除去液,イソプロピルアルコールなどの材料は需要が増加し,市場は2018年比で横ばいとなったという。
2020年は新型コロナウイルス感染症の影響から伸びは鈍化するとみるが,5G通信の普及に向けた設備投資,テレワークやネット視聴の増加に伴うデータ通信量の増加でサーバーへの需要が高まっていることから,サーバー向けが半導体用材料の需要をけん引し,市場は拡大し341.9億ドル(2019年比3.8%増)と予測する。
今後は5G通信の普及に伴いIoT活用に関連した半導体の需要が高まることから,長期的にも半導体用材料の市場は拡大していくとみる。特に半導体の微細化、高層化に寄与する材料が市場拡大をけん引していくと予想する。
前工程材料では,先端SoC(システムオンチップ)でのEUV露光技術の採用に伴い,EUVに対応するフォトレジスト,フォトマスクの市場が2019年に本格的に立ち上がった。EUV露光技術の採用は今後も増加するため,EUV関連材料の需要は今後も増えるとみる。
また,今後はメモリ後工程材料は,FC-BGA用パッケージ基板材料がサーバー向けで大型化しているため,今後の需要増加が予想されるという。また,車載デバイス向けで採用増加が期待されるリードフレームの需要が増加していくとみている。2024年の半導体用材料市場全体では,405.3億ドル(2019年比23.0%増)を予測する。
レポートでは,注目分野として半導体分野におけるシリコンウエハー(11N以上の超高純度シリコン)を取り上げた。2019年はメモリーの在庫調整が進められた影響を受けたが,価格の値上げや長期契約の比率が高まったことから市場は2018年比で小幅な縮小にとどまったという。
2020年は,新型コロナウイルス感染症の影響により半導体が搭載される自動車や通信機器などの生産工場の停止や消費の冷え込みなどにより状況が厳しくなっている。特に,自動車は先進国を中心に生産停止・低稼働が続いており,車載半導体向けは減少するとみる。
一方で,テレワークや外出自粛の影響でデータ通信量が増えており,サーバー向けは増加を予想する。今後は,5G通信の普及に伴いIoT活用が進んでいくことから半導体需要が増加し,市場は拡大していくとみている。その結果,2024年シリコンウエハー市場は128.7億ドル(2019年比16.4%増)を予測する。
もう一つの注目分野とした感光性材料は,フォトリソグラフィ工程で使用される,g線/i線レジスト,KrFレジスト,ArFレジスト,EUVレジストを対象とした。
2019年の市場は,EUV露光技術を用いたデバイスの量産が開始され,EUVレジストの需要が増加したことで拡大した。2020年は,サーバー向けなどで半導体の需要が高まっていることから市場は拡大するとみる。今後も安定した需要を獲得していくとみており,中でもEUVレジストが市場の拡大をけん引していく結果,2024年フォトレジストの世界市場は23.7億ドル(2019年比60.1%増)になると予測している。