徳島大学,京都府立医科大学,日本フネンの研究グループは,A型インフルエンザウイルスの不活化に最適な紫外線を決定する新たな指標「RAE」を開発した(ニュースリリース)。
近年では様々なUV-LEDが開発されているが,どのピーク波長のUV-LEDが病原ウイルスの不活化に最も効果的か明らかにされていない。また,低圧水銀ランプ(UVランプ)と病原ウイルスへの不活化効果を比較した報告も多くなかった。
そこで研究では,ピーク波長がそれぞれ365nm,310nm,300nm,290nm,280nm,270nm,260nmのUV-LED(すべて日亜化学工業製)を使用してUVランプとの比較を行なった。
すべての光源を同じ放射照度(2.4mW/cm2)となるように調整し,ウイルス溶液に2秒間照射を行なった。照射後のウイルス溶液をイヌ腎尿細管上皮由来細胞(MDCK細胞)と発育鶏卵に感染し,ウイルス力価(感染力価)を評価したところ,260nm UV-LEDによる照射が最も不活化効果が高く,UVランプよりも有意に高くなった。
次に,UV-LEDまたはUVランプ照射によるウイルスRNAの傷害性の評価でも,260nm UV-LEDによる照射が最も傷害度が高く,UVランプよりも有意に高くなった。また,UV-LEDやUVランプ照射によるウイルス力価の低下(不活化効果)はウイルスRNAの傷害性と高い相関性を示した。
そこで,紫外線光源の発光スペクトルとウイルスRNAの吸収スペクトルと相関性を示した係数「RAE」を考案し,これまで用いた紫外線光源の不活化効果と高い相関性があることを示した。
より高い「RAE」の紫外線光源を作成するために,3種類のUV-LEDを組みあせたHybrid 型UV-LEDを作成し,同じ放射照度(2.4mW/cm2)で2秒間照射した場合,Hybrid型UV-LEDは最も高い不活化効果を示した。Hybrid型UV-LEDの照射による高い不活化効果は,H1N1亜型だけではなく,鳥インフルエンザウイルス(H6N2 亜型)にもみとめられた。
UV-LEDなどの紫外線光源の「RAE」を高くする,つまり,光源の発光スペクトルをウイルスRNAの吸収スペクトルに近づけることにより,紫外線照射によるウイルス不活化効果が高まる可能性が考えられる結果を得た。
新型コロナウイルスと同じ属の別のコロナウイルスは,A型インフルエンザウイルスよりもUV-LED照射で不活化されやすいことがわかってきたという。研究グループは今後,「RAE」が新型コロナウイルスや他の病原ウイルスへ応用可能か検討を行なうとしている。