島津製作所と堀場製作所は,島津製作所の高速液体クロマトグラフ(HPLC,以下LC)および堀場製作所のラマン分光装置を融合させた計測機器「LCラマン」の開発・販売の協業を開始する基本契約を締結したと発表した(ニュースリリース)。
LCは生物由来の代謝物など,複雑な試料中の目的化合物の分離・定量・抽出に広く用いられてきた。しかし,LCで最も多く用いられる吸光度検出器は,糖類などUV吸収のない化合物の検出が困難であり,またUVスペクトルは定性能力の点で他の検出手法に及ばない。
一方,ラマン分光装置は,非破壊で分子構造を確認でき,分子固有のラマンスペクトル情報で精度の高い化合物定性が行なえる。ただし,複数の成分が混合した試料ではスペクトル重複が起きるため,前処理として成分分離を必要とした。
今回開発する「LCラマン」は,LCが効率的に混合試料中の成分を分離し,続いてラマン分光装置がLCによって分離された化合物の定性・定量計測を行なうもの。
従来のラマン分光装置は,数100ppmほどの成分の定性・定量計測にとどまっていたが,LCで成分分離を行ない,プレート上にスポッティングされた試料を濃縮乾固することで,1ppm以下の微量成分の検出を目指す。また,統合ソフトウェアも共同開発することで,試料の導入から分析までシームレスな運用を実現するという。
島津製作所のLCおよび堀場製作所のラマン分光装置は,それぞれ日本国内でトップシェアを獲得している。今回の協業において島津製作所は「LCラマン」を実用化するためのLC,LC周辺機器,ソフトウェアについて,開発および販売を担う。また,堀場製作所は,「LCラマン」として実用化するためのラマン分光装置,ソフトウェアの開発および販売を担う。また,早稲田大学も交え,三者共同でのアプリケーション開発を予定している。