名古屋大学と米モントレー湾水族館研究所の研究グループは,深海4,000mまでの海底を調査し,新たに4種の発光するサンゴやイソギンチャクの仲間を発見した。さらに,これらの発光の分子メカニズムを解析し,八放サンゴ亜綱における発光能力の進化の一端を明らかにした(ニュースリリース)。
生物発光の進化学的な研究は,一部を除いて海の生物ではまだ明らかになっていない。生物発光は,ルシフェリンとルシフェラーゼによる酵素反応だが,このルシフェラーゼが,発光の進化を解明する手がかりとなる。例えば,全てのホタル(甲虫目ホタル科)は、ルシフェラーゼが共通している(相同である)ことが遺伝子解析などからわかっている。しかしながら,海洋生物,特にサンゴの仲間では,発光の分子メカニズムに関する研究例は少なく,発光の進化についてはほとんどわかっていなかった。
サンゴの仲間(花虫綱)は7,500種ほどから構成されており,約半分がイソギンチャク類やハードコーラル類を含む六放サンゴ亜綱,残りがソフトコーラル類やウミエラ類,宝石サンゴ類などを含む八放サンゴ亜綱になる。これまでに,いくつかのイソギンチャク類やサンゴ類の生物発光が報告されているが,深海に生息するサンゴにおける発光形質の有無,また,その発光システムの分子機構についての研究もほとんど進んでいなかった。
研究グループは,遠隔操作無人探査機(ROV)を用いてアメリカのモントレー湾の深海4,000mを調査し,10種の発光する花虫類を発見し採取した。そのうち4種は,これまでに発光することが知られていなかった。
採取した花虫類はセレンテラジンを発光基質としていることが明らかになった。さらに,八放サンゴ類と六放サンゴ類では,異なるルシフェラーゼを持ち,進化的な起源が異なることが遺伝子解析結果からも支持された。
また,ROVに搭載した高感度カメラによる花虫類の発光の観察から,花虫類には,青色,緑色,青と緑の二色に発光する種が存在することがわかった。ところが,今回調査したすべての花虫類のルシフェラーゼは青色に発光した。研究グループは,緑色蛍光タンパク質(GFP)により発光色にバリエーションがあることを突き止めた。
数十mより深くなると,海は青一色の世界になり,多くの生物は青色以外の光を見ることができない。そのため,多くの深海発光生物は青く光る。目を持たないサンゴ類が発光色を使い分けている意義は不明だが,サンゴと共生する生物との相互関係が関係しているのかもしれないとしている。