新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,大阪大学,ヤマザキマザック,島津製作所と共同で,高輝度青色半導体レーザーを活用し,銅を高速・精密にコーティングできるハイブリッド複合加工機を開発した(ニュースリリース)。
青色半導体レーザーは金属に対する吸収効率が高く,次世代加工機の光源への応用が期待されている。特に,銅素材は,高熱伝導性や高電気伝導性を持つことから,高い精度が要求される航空・宇宙・電気自動車など多くの産業からの活用が期待されている。
また,銅や銅合金は,細菌に対して殺菌・抗菌作用,ウイルスに対しては不活化作用があり,手すりやドアノブなどへの利用が始まっている。しかし,これらの銅製品は,バルク材(素材)からの削り出しや鋳造などで製作されるため銅材料の使用量が多く,価格も高いという課題があった。
これらを解決する方法として,表面や必要な部分だけに銅をコーティングする技術が有効となる。NEDOのプロジェクトでは,金属の精密レーザーコーティングを可能とするマルチビーム加工ヘッドを開発したが,青色半導体レーザーの出力は当初20W程度で総出力も100W程度だったため,十分なコーティング機能はなかった。
今回,研究グループは,200W高輝度青色半導体レーザーを3台装着した600W級マルチビーム加工ヘッドを持つハイブリッド複合加工機を開発。ニッケル系などの金属に加え,純銅や銅合金などの銅材料を従来よりも6倍以上の高速度でコーティングできる。さらにレーザー集光スポットにおけるパワー密度も6倍になったことから,従来困難であった銅の多層コーティングも可能となった。
また,加工ヘッドを一回走査することで得られるコーティング領域の幅の最大値は,従来の400μm程度から1000μm程度まで増大可能であることが明らかとなった。噴射される銅粉末材料を直接加熱することで母材金属の混入が少なく,ゆがみの小さな精密コーティングができる。加工ヘッドは直線3軸と回転2軸を有し,同時5軸制御により複雑な形状の部品に銅をコーティングできる。
これにより複雑形状のドアノブなどにも銅の高速・精密コーティングが容易になる。さらに,より高い殺菌・抗菌・ウイルス不活化作用を有する銅合金粉末の開発に合わせた銅合金コーティングもできるという。
ヤマザキマザックは,2020年末には,kW級青色半導体レーザーマルチビーム加工ヘッドを搭載することで,10倍以上のコーティング速度を可能とするハイブリッド複合加工機を開発し,2021年の製品化を目指すとしている。