東邦大学と名古屋大学の研究グループは,白色光源と光学フィルターを用いて,金ナノ粒子を位置選択的に融合させる技術を新しく開発した(ニュースリリース)。
ナノ粒子に光による電磁場が加わることで誘起される局在表面プラズモン共鳴(LSPR)は,ナノ粒子の形状に強く依存し,その光学特性を決める。ナノ粒子の構造を制御することで光学特性を操ることができることから,これまでに様々な構造を有する金属ナノ粒子が合成されてきた。
さらに高次の構造体を構築することでLSPRのモードを制御する方法が提案されており,DNAなどの化学修飾によりナノ粒子を繋ぐ方法が主に用いられており,感度の高い光分析技術への展開が期待されている。また,繋ぎ方を工夫することで,光学活性や旋光性などの光学特性を発現させることもできる。
このような技術は,構造を設計通りに構築することができる一方,化学結合を任意の位置に制御よく導入することが難しいことや,構造構築にかかる作業工程が多いことなどが課題として挙げられている。
研究グループは,ナノ粒子の形状に依存したLSPRを利用し,位置特異的に強電場を発生させることでナノ粒子を融合させる技術を開発した。発生する強電場の位置はナノ粒子の形状と照射する光の波長に依存するため,照射する光の波長を決めることで融合するナノ粒子の形状と融合位置を任意に設定できる。
今回,白色光源と光学フィルターを用いることで,構造構築に対する自由度が高く,工程がシンプルなナノ物質の高次構造構築技術を開発した。三角形ナノプレート型金ナノ粒子に赤色の光を照射することで,三角形の頂点付近にLSPRのモードが現れ,隣接した三角形ナノプレートと融合すると,蝶型の金ナノ粒子の高次構造体を得ることができた。
走査透過型電子顕微鏡と電子エネルギー損失分光法により,金属ナノ粒子に誘起されるLSPRモードを観察できる。この研究でも融合前後のLSPRを観察し,三角形ナノプレート型金ナノ粒子の融合した部分に新たなLSPRのモードが発生することを確認した。融合前には大きく分けて3つのLSPRのモードが存在していたが,融合し高次構造を構築することで4つめのLSPRモードを発生させることに成功した。
金ナノ粒子のLSPRによる光増強効果と組み合わせれば,多色の光を使った高感度センサーへと応用展開できる。今後は多種類の金ナノ粒子を融合し,異なるLSPRを発生させることで,高感度のマルチカラーセンサーなどを簡便に作製することが期待できるとしている。