物質・材料研究機構(NIMS)は東京化成工業と共同で,電気をかけると色が変わる材料「メタロ超分子ポリマー」を安定的に供給できる合成プロセスを確立した(ニュースリリース)。
電気で着色と透明が切り替わるエレクトロクロミック(EC)材料を使った調光ガラス窓は,ブラインドやカーテンの機能をガラス自体が担うため,すっきりしたオフィス空間や生活空間を作り出す次世代ガラス窓として世界で実用化研究が進められている。
EC調光ガラスは,EC材料を透明電極が付属した2枚のガラス板で挟み,電極間に電気を流すことで色を変える。ガラス上にEC材料を製膜するには真空蒸着設備が必要となるため,ガラスサイズが大きくなると設備コストが非常に高くなり,一般の窓への普及が進んでいない。
そんな中,NIMSは2005年にEC調光ガラスの低価格化が可能な塗布での製膜が行なえるEC材料「メタロ超分子ポリマー」を開発した。この材料は,発色性や色変化の応答性にも優れ,電源を切ってもその発色状態が維持される低消費電力性といった特徴があり,量産に向けた生産プロセスの開発が期待されていた。
しかしこのEC材料は,原料となる有機分子からの多段階合成を必要とする。これまで各合成工程を異なる企業が行なっていたために,全体の製造コストの上昇と,各工程での品質のばらつきが量産の障害となっていた。
今回,研究グループは,メタロ超分子ポリマーの生産プロセスの検討を行なった結果,原料の有機分子から本EC材料の合成に至るまでの一貫プロセスを確立することで,安定した品質で量産できる体制を確保した。月産で百グラムスケール(EC調光ガラスにして数十平米分)の製造を可能としており,この材料の実用化を推進するためにさらなるスケールアップにも取り組んでいるという。
このEC材料は,6月30日に東京化成工業よりPoly(Fe-btpyb)Purpleの製品名で一般販売を開始する予定。今後,東京化成工業から調光ガラスを製造する企業へのこの材料の販売と,NIMSからの用途特許(調光ガラス及びその構成モジュール等を製造するための特許)のライセンスをセットで行なうことによって,次世代ガラスの市場育成を促進するとしている。