理科大ら,ECの劣化原因の定量的な評価手法を開発

東京理科大学と物質・材料研究機は,スマートウィンドウなどに用いられるエレクトロクロミズム(EC)材料の代表例である,三酸化タングステン(WO3)へ電気化学的にカチオン挿入脱離を行なうことで生じる,EC特性劣化原因の新たな定量的評価手法を開発した(ニュースリリース)。

WO3は代表的なEC材料で実用化もされているが,透過率の変化率の減少等のEC特性の劣化や不可逆性が発生することが課題となっている。

この背景には,①可逆的なLi+イオンの挿入と脱離,②不可逆的なLi2WO4の生成,③不可逆的なLi+イオンのトラッピングという3つの現象がある。しかし,これまでの研究からは,EC特性劣化の原因がLiイオンのトラップであることは定性的にしか分かっておらず,定量的な評価方法は確立されていない。

そこで研究では,従来の評価手法である電気化学測定に加えて,硬X線光電子分光法(HAXPES),in situラマン分光法を行なうことで,①から③を区別して定量的に評価できる新たな手法を開発した。

Li+イオンの挿入はタングステンイオンの酸化還元反応を伴い,LixWO3においてはタングステンイオンはW5+の形で存在する(W6++Li++e→W5++Li+)。そのため,固/固界面付近の層における電子構造と化学組成を調べることができるHAXPESを用いることで,タングステンイオンの酸化状態を評価することができ,①可逆的なLi+イオンの挿入と脱離と③不可逆的なLi+イオンのトラッピングを区別することができる。

しかし一方で,Li2WO4においてタングステンイオンはW6+の形で存在することから,②の不可逆的なLi2WO4の生成は,HAXPESでは評価することができない。

そこで研究グループは,①であるか否かを評価できる電気化学的手法と,①と③を区別できるHAXPESを組み合わせることにより,①から③を区別してその比率を定量的に評価することに成功した。さらに,in situラマン分光計を用いることで,Li+イオンの挿入による結晶化度の増加を高感度で検知することもできた。

この研究で開発したHAXPES,in situラマン分光法,電気化学的計測を組み合わせた新たな手法で解析した結果,①可逆的なLi+イオンの挿入と脱離,②不可逆的なLi2WO4の生成,③不可逆的なLi+イオンのトラッピングの比率は,それぞれ41.4%,50.9%,7.7%であることが示されたという。

研究グループは,この方法を用いることで,将来的には非常に高性能なWO3を利用したEC素子の開発につながる可能性があるとしている。

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