金沢大ら,暗黒物質の寿命測定感度を明らかに

金沢大学とアムステルダム大学は,宇宙暗黒物質から発生しうるさまざまな種類の宇宙線のシミュレーションを行ない,現在の宇宙線観測データが持つ暗黒物質の寿命測定感度を明らかにした(ニュースリリース)。

宇宙には,星や銀河などを構成するいわゆる通常の物質の他に,暗黒物質(ダークマター)と呼ばれる物質が存在することが宇宙観測から明らかになっている。通常の物質の正体は素粒子標準理論によって明らかにされている一方,暗黒物質の正体は分かっていない。

研究グループは,地球に絶えず降り注ぐ宇宙線を観測することで,暗黒物質の正体を探っている。地球に降り注ぐ宇宙線は,陽子,光(ガンマ線,X線,紫外線,可視光,赤外線,電波),電子に加え,反陽子や陽電子などの反物質,ニュートリノ,反ニュートリノが挙げられる。

反物質やニュートリノの観測が可能となったことは近年の宇宙線観測の大きな進展となっただけでなく,陽子や光の観測についても非常に広いエネルギー領域での観測感度が向上している。そうした進展により,広いエネルギー領域において多様な宇宙線粒子の観測データが蓄積され,それらを用いて宇宙の謎を解き明かそうとする「マルチメッセンジャー天文学」が注目を浴びている。

研究では,マルチメッセンジャー天文学を暗黒物質探索に応用する研究を行なった。その結果,宇宙線の中でもガンマ線とニュートリノの観測が暗黒物質の寿命を探索するために最も良い感度を持つことを発見した。

マルチメッセンジャー天文学を活用した暗黒物質探索は,素粒子物理学分野と宇宙物理学分野の2つの学問領域をまたぐ研究。双方の知見を結集することで暗黒物質の正体を解明すべく,今後さらに発展することが期待されるという。今回の成果は,先駆的研究として位置付けられるものだとしている。

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