京大ら,レーザーで高次高調波光の偏光特性を操作

京都大学と量子科学技術研究開発機構の研究グループは,波長の異なる強い近赤外のレーザー光パルスを半導体材料GaSeに同時に照射すると,可視から紫外光領域にわたって発生する高次高調波光の偏光特性を操作する方法を発見した(ニュースリリース)。

レーザー光パルスやテラヘルツ光パルスの高強度化による新しい光学現象のひとつに,固体からの高次高調波光発生があり,入射電場の整数倍の周波数をもつ高次高調波光が発生する。これは,強いレーザー光を照射することによって生成されるキャリアが,さらに光電場で加速されて発生する非線形電流が発生起源の1つと考えられている。

しかし,これまでの研究では,主に単一のレーザー光パルスが励起光として用いられ,より広範な波長変換技術への発展のためには2つのレーザー光励起による高次高調波光の光波混合の実現,また発生した高次高調波光の特性(強度,偏光)の理解と制御が求められていた。

研究では,近赤外光領域の2色の異なる波長(l1=2.4mm(125THz),l2=1.3mm(230THz))を持つレーザー光パルスを半導体試料であるGaSeに照射した。約10兆分の1秒の時間幅の2つのレーザー光パルスを同じタイミングで試料に照射すると,2つのレーザー光の各々の波長の整数倍の高次高調波光に加えて,2つの波長の和,および差の波長を持つ様々な次数の高次高調波光が観測された。

また,これらの高次高調波光の強度は結晶角度に依存し,レーザー光の強度を高くすると低い強度では観測されない結晶の角度依存性が出現することがわかり,従来の非線形光学では理解できないことを示した。

単一のレーザー光l1による励起では,高次高調波光の偏光方向はそれとほとんど同じになる。しかし,強いレーザー光l1よりも100倍程度弱いもう1つのレーザー光l2を同時に照射すると,レーザー光l1励起だけの場合に比べて,90度回転したレーザー光l2の方向に100倍程度増強された高次高調波光が発生することを発見した。

また,これらの異常な高次高調波光の角度依存性や偏光回転は,GaSeの結晶の電子状態を近似的に取り込んだ2次元的な電子運動のモデル計算によって再現できた。これらの結果は,2色のレーザー光の電場で電子運動を2次元的に操作でき,高次高調波光の偏光を大きくする方法を示した初の成果。

研究グループは今後,特異なトポロジーの電子構造を持つ物質へと研究を発展させることにより,全く新しい光の特性制御方法への展開,さらに光の周波数で動作する光エレクトロニクス技術開発への貢献も期待されるとしている。

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