原研ら,非線形光学で大強度陽子ビームを制御

日本原子力研究開発機構(原研)の研究グループは,原研および高エネルギー加速器研究機構の共同運営組織である,J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)における中性子源施設の安定な運転のため,大強度陽子ビームの整形技術を開発した(ニュースリリース)。

J-PARCの中性子源施設では,大強度陽子ビームを水銀ターゲットに当てて中性子を生成する。水銀ターゲットの鉄鋼製容器は,大強度の陽子ビームに晒されることにより損傷するため,安定した中性子源施設の運転のためには,ターゲットに当たる陽子ビームの電流密度を下げて損傷を抑えることが必要。

しかし,ビーム形状が尖った山型(ガウス分布)の分布を示す既存のビーム調整技術(線形ビーム光学)では電流密度をあまり下げられなかったが,ビームを平坦な形状に整形できれば,水銀ターゲット上の電流密度を下げることができる。

以前より,八極電磁石を用いた非線形光学によるビーム整形技術を適用すればビームを平坦な形状に整形できることが知られていた。しかしこの調整技術は八極磁場などのパラメータ調整が複雑なため,ある特定の条件でしか適用できず,また副作用としてビームロスが発生することも知られていた。

そこで研究グループは,このビーム調整技術を追求し,あらゆる条件において,ビーム形状はたった2つのパラメータで表せることを見いだした。また,ビームロスを抑えた状態で平坦な形状にビームを整形して電流密度を下げられる最適な条件を明らかにした。

実際にJ-PARCの中性子源施設に八極電磁石を設置し,最適条件でビームを調整した結果,ビームロスを発生させずに予測どおりにビームが整形できることを確認した。このビーム整形により,水銀ターゲット上の電流密度を従来の値から約30%低下できた。メガワット(MW)クラスの大強度加速器施設で非線形ビーム光学によりビーム整形を行なったのは,世界で初めてだという。

この研究で得られた知見により,J-PARC等の大強度陽子ビームを用いた中性子源施設でさらに安定したビーム運転が行なえるようになった。また,この手法は高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減のための加速器駆動システム(ビーム出力30MW)のような,将来の大強度加速器施設の安定したビーム運転に貢献し,さらなる加速器施設の安全性向上につながるものだとしている。

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