大阪大学の研究グループは,大阪大学レーザー科学研究所の大型レーザー装置激光XII号を用いた動的超高圧実験により,高速に大きく変形する際のダイヤモンドをリアルタイムに直接観察することで,その光学特性を世界で初めて明らかにした(ニュースリリース)。
ダイヤモンドは極めて高い硬度のみならず,高い透過率や屈折率などユニークな光学的特性を有することが知られている。物質材料科学や地球惑星科学,レーザー核融合工学などの分野横断的科学の最先端において,ダイヤモンドが広く利用されているが,必要不可欠な動的超高圧下の光学特性は十分に理解されていなかった。
研究グループは高強度パルスレーザーを用いた動的超高圧実験で,結晶状態のダイヤモンドを数ナノ秒の非常に短い時間に圧縮して光のドップラー効果を利用した独自の観測システムによって,圧縮状態を決定しながら透過率および屈折率の測定をリアルタイムで行なうことに成功した。
その結果,ダイヤモンドはおよそ90万気圧の圧力域までは初期の透過率から変化がないこと,90万気圧から170万気圧の圧力域では有意な変化が現れはじめ,170万気圧を超える圧力域ではほぼ完全に不透明となることが明らかとなった。
また,透明な170万気圧までの圧力域では,これまでの静的圧縮下の結果に反して,圧力の上昇に伴ってダイヤモンドの屈折率が上昇することもわかった。
極限的な静的超高圧を生成するためのツールのひとつとして,ダイヤモンドアンビルセルがよく知られている。近年,このダイヤモンドアンビルセルと高強度パルスレーザー駆動の動的超高圧を組み合わせた実験が各国で進められている。
今回の成果は,ダイヤモンドアンビル内部で起こる動的超高圧現象を直接観察する上で必要不可欠な基礎的物性を提供するという。また,セラミックス材料あるいは高硬度材料のパルスレーザーによるプロセスや加工を正確に理解し,シミュレートするための貴重な知見としている。