金沢工業大学,高知工科大学の研究グループは,赤と緑を区別できない2色覚者(色覚異常者)でも,条件により一般色覚者と同様の色の印象をもつことを明らかにした(ニュースリリース)。
遺伝的な理由で2色覚者(色覚異常者)は,赤と緑の色の違いを識別できない。一方で,日常生活では,例え赤や緑が見えていないとしても,様々な色が表す意味を一般色覚者と同じ様に理解している。
これまで,色彩学においては2色覚では赤や緑の見えが全く無いか,非常に微弱であるものの,赤や緑の色の印象が一般色覚者と同じになる理由については明らかになっていなかった。
この研究では,「過激な」や「のどかな」などの抽象的な意味を表す9つの単語(意味語)に相応しい色を4秒程度で選ぶという研究グループが開発した実験手法による実験1と,色を見せて35組の形容詞対からその印象を聞くという従来手法による実験2を組み合わせて,色の見え方と色の印象の関係を両方向から調べた(意味語空間の双方向性検証)。
両実験は,一般色覚者と2色覚者それぞれ5名の協力を得て実施した。その結果,意味語の印象に相応しい色を選ぶ実験では,2型2色覚者は一般色覚者と異なり,赤や緑などの見えにくい色はあまり選ばず,黄色や白が選ばれた。
一方,色を見せて色の印象を聞く実験では,意味語の扱いも含めて両者にほとんど差がなかった。この結果により,2型2色覚者は意味語をとおしても,やはり赤や緑が見えていないこと(色の見え方が赤緑方向,黄青方向の2次元ではなく,黄青方向の1次元で表現されていること)を示した。
一方で,赤や緑と理解すると色に対する印象は,一般色覚者とほぼ同じであり,見え方ではなく過去の経験や学習から色への印象が形成されたことを示した。
これの結果から,ゆっくりと色を見ることができる場合は,一般色覚者と同様の印象を2色覚者にも与えることが可能であり,逆に数秒程度しか色を見ることができない場合は,赤や緑の色が持つ意味(止まれや進め等)を2色覚者に伝えられないことが明らかになった。
今後の研究では,何歳ぐらいで同じ印象が形成されるのかを調べるため,若年層から高齢者で比較実験を行なうことも必要となるという。
また,この研究成果により,商品デザインの全てを2色覚者向けの色に変更する必要性はあまりない一方,サイン等ではカラーユニバーサルデザインが重要であるとの観点から,様々な物の色デザインに応用されることが期待されるとしている。