北大ら,カモノハシとハリモグラの色覚の種差を解明

北海道大学,東京大学,明治大学,名古屋市東山動物園,豪アデレード大学,中国浙江大学,中国BGI研究所は,卵を産む哺乳類であるカモノハシとハリモグラの色覚に種差があることを解明した(ニュースリリース)。

色覚は脊椎動物と節足動物の多くに備わる重要な感覚で,光の波長が短いほど青っぽく,長いほど赤っぽく,中間的な波長では緑や黄などをヒトは感じる。これは短波長,中波長,長波長の感受波長域を持つ3種類の色覚センサー(色覚オプシン)が眼球の網膜にあるため。これを三色型色覚といい,多くの霊長類に見られる。

一方,他のほとんどの哺乳類は,短波長と長波長のみの2種類の色覚オプシンによる二色型色覚。二色型や三色型や四色型の違いは色覚オプシンのタンパク質の種類数に対応する。

短波長側から長波長側へ,SWS1,SWS2,RH2,LWSという四つの色覚オプシンがある。オーストラリアに生息する単孔類のカモノハシとハリモグラは二色型色覚だが、持っている色覚オプシンはSWS2とLWS。胎生哺乳類が持つSWS1を失い、代わりにSWS2は残すという独自の進化によって二色型色覚になった。

この研究では,両種のSWS2とLWSがどのような光の波長を吸収しているのかを,培養細胞を用いた実験で解析した。さらに、単孔類がどのような光環境のもとで生活を送っているのか,飼育のハリモグラ2頭を1ヶ月間ビデオ撮影することで,活動時間について解析し,考察した。

培養細胞にカモノハシとハリモグラの色覚オプシンを発現させて,波長の光を吸収するかを調べた。その結果,カモノハシのSWS2とLWSの吸収極大波長は,ハリモグラのSWS2とLWSの吸収極大波長よりも,それぞれ10nmズレていることが分かった。

カモノハシの祖先であるオブドゥロドンは水底ではなく水中で餌を探していたため,目を開けて視覚に依存していたと考えられている。濁りの少ない水中では短波長側(”青側”)の光が使いやすいため水中生活するカモノハシに対し,ハリモグラの陸生で周日行性という特殊な生態が色覚の違いに関係していると考えられるという。

研究グループは,嗅覚も,味覚も,視覚も両種で異なるという発見を続けてきた。カモノハシはダム開発などによって,ハリモグラは森林破壊などによって,生息地が奪われ,地域によっては絶滅が危惧されている。今後も日豪が連携して研究していくことは,両種の保全と未来に繋がっていくとしている。

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